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人材開発支援助成金の賃金助成の計算|7時間の研修が6時間になります

人材開発支援助成金の賃金助成は「1人1コース1時間あたり」の単価×実訓練時間で決まります。休憩・移動時間の扱い、所定労働時間外の研修が対象外になる理由、加算要件の狙い方を計算例つきで解説します。

佐野 泰規佐野 泰規株式会社AIエージェント 代表取締役約8分で読めます
集計表の隣に置かれた電卓
Pexels / Kindel Media

この記事でわかること

  • 賃金助成は経費助成とは別の2階部分。単価×実訓練時間×人数で決まり、単価はコースと企業規模によって変わる
  • 休憩時間・移動時間・助成対象外のカリキュラムは訓練時間から除かれる。研修の拘束時間がそのまま助成対象になるわけではない
  • 所定労働時間外や休日(振替休日を除く)に実施した時間は賃金助成の対象外。夜間・休日開催を選ぶと助成額が減る
  • 加算される対象はコースで異なる。事業展開等リスキリング支援コースには賃金要件等による加算が無く、経費助成率75%(大企業60%)・賃金助成1,000円(同500円)が通常分の率。加算は設備投資加算だけ

助成金の試算をするとき、多くの人が経費助成(受講料の何%が戻るか)だけを見ます。しかし人材開発支援助成金にはもう一つ、訓練中の賃金に対する助成があります。金額は小さめですが、計算を誤ると申請額がずれ、書類の差し戻し原因にもなる部分です。この記事では、賃金助成の計算方法と「どの時間が対象になるのか」を整理します。

賃金助成は「2階部分」

人材開発支援助成金の助成は2階建てです。

  • 1階:経費助成 — 受講料・教材費など、訓練にかかった経費の一定割合
  • 2階:賃金助成 — 訓練を受けている間に支払った賃金に対する助成

賃金助成は「1人1コース1時間あたり」の定額で計算します。時給の実額に連動するのではなく、決められた単価が適用される仕組みです。

単価はコースと企業規模で変わります。たとえば事業展開等リスキリング支援コースでは、中小企業が1人1時間あたり1,000円、大企業が500円とされています。単価は年度やコースの改定で変わるため、申請前に必ず最新の公式資料で確認してください。

対象になる時間、ならない時間

ここが本題です。研修の拘束時間がそのまま助成対象になるわけではありません。

制度上、次の2つの用語が使い分けられています。

用語中身
総訓練時間数食事などの休憩時間を除いた訓練時間
実訓練時間数総訓練時間数から、移動時間や助成対象外のカリキュラム時間を除いたもの

助成の計算に使うのは実訓練時間数です。つまり、次のものは落ちていきます。

  • 昼休みなどの休憩時間
  • 会場までの移動時間
  • 助成対象にならないカリキュラム部分(懇親会、自社の業務説明など)

「10時から17時まで研修だから7時間」ではありません。昼休み1時間を挟むなら6時間、そこに対象外のプログラムがあればさらに減ります。研修会社から受け取るカリキュラムに、休憩と対象外パートが明示されているかを確認してください。

見落としやすい落とし穴:所定労働時間外の研修

実務でいちばん影響が大きいのがこれです。

訓練の時間帯が通常の所定労働時間からずれる場合、原則として所定労働時間外に行われた訓練は賃金助成の対象外となり、その分は算定から除外されます。厚労省のパンフレットでも、支給されない場合の一つとして明記されています。

・所定労働時間外や休日(振替休日は除く)に実施された時間の賃金助成、OJT実施助成

——出典:厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版・令和8年度)」(PDF)(2026年8月17日閲覧)

具体的に言うと、こういうケースです。

  • 所定労働時間が9時〜18時の会社で、19時から2時間の研修を実施した → その2時間は原則対象外
  • 土曜日に研修を実施した(所定休日) → 原則対象外

「現場を止めたくないから業務時間外にやろう」という判断は、現場運営としては合理的でも、賃金助成の観点では不利に働きます。あらかじめ所定労働時間そのものを変更し書面で通知しているなど例外的な扱いもあるとされていますが、これは自己判断せず労働局に確認すべき領域です。

日程を決める前にこの点を知っているかどうかで、受け取れる金額が変わります。

計算してみる

中小企業が事業展開等リスキリング支援コースを使い、10名に対して全12時間の生成AI研修を実施したケースで考えます(単価1,000円と仮定)。

1,000円 × 12時間 × 10名 = 12万円

金額としては経費助成より小さく見えますが、申請の手間は同じ書類の中で完結するため、取らない理由はありません。なお、経費助成と合わせた全体像はAI研修に人材開発支援助成金は使える?で試算しています。

助成される時間には上限もあります。コースにより1人1訓練あたり1,200時間(一部の訓練は1,600時間)が限度とされていますが、数日で終わるAI研修でこの上限に届くことはまずありません。

むしろ気にすべきは下限のほうです。実訓練時間数が10時間未満だと支給されません。 半日の研修を1回だけ、という組み方は制度に乗らないということです。ここも、日程を決める前に押さえておきたい点です。

加算要件を狙うかどうか

助成額を上乗せする仕組みもあります。次のいずれかを満たすと、助成率・助成額が加算されます。

  • 賃金要件 — 訓練修了後の賃金を、改定前後で比較して5%以上引き上げる
  • 資格等手当要件 — 資格等手当の支払いを就業規則等に規定したうえで訓練修了後に支払い、支払い前後の賃金を比較して3%以上引き上げる

ここで、コースによって何が加算されるかが違う点に注意してください。私も最初は混同していました。

  • 事業展開等リスキリング支援コース — 賃金要件等による加算はありません。 支給要領(令和8年8月3日版)0504の助成率表は、通常分が経費助成率75%(大企業60%)・賃金助成1,000円(大企業500円)で、賃金要件等を満たす場合の欄そのものが設けられていません。このコースの加算は設備投資加算(導入費用の50%・中小企業のみ)だけです
  • 人への投資促進コースの定額制訓練 — こちらは経費助成率が60%→75%(大企業45%→60%)に上がります
  • 人への投資促進コースの情報技術分野認定実習併用職業訓練(賃金助成が800円のもの) — こちらは賃金助成が1時間あたり+200円(大企業は400円に+100円)という形の加算があります

つまり「賃金要件を満たせば時間単価が200円上がる」は、どのコースでも成り立つ話ではありません。AI研修でリスキリングコースを使う場合、効いてくるのは経費助成率のほうです。

どちらにしても、魅力的に見えて冷静に判断すべき点は同じです。賃上げは一度やれば毎年続く固定費です。1回の研修で上乗せされる助成額と、恒久的な人件費増を比べると、割に合わないこともあります。

逆に「どのみち賃上げを予定していた」「AIスキルを手当として制度化したかった」という会社にとっては、タイミングを合わせるだけで得られる上乗せです。助成金のために賃上げするのではなく、賃上げの予定に助成金を合わせる——この順番が健全です。

つまずきやすい3点

最後に、賃金助成まわりで実際に問題になりやすい点を挙げます。

  1. カリキュラムに休憩が書かれていない。 何時間が実訓練時間なのか証明できず、差し戻しの原因になります。
  2. 受講者が遅刻・早退した。 その分は実訓練時間から外れます。総訓練時間の8割以上という修了要件にも関わるため、記録は正確に残してください。
  3. 賃金台帳・出勤簿と突き合わない。 研修日に「通常勤務」として記録されていると、実態と書類が食い違います。

不支給になりやすいポイント全般は助成金が不支給になる理由と回避策にまとめました。

なお繰り返しになりますが、訓練開始前の計画届が必要で、要件を満たしていても審査があり、受給が保証されるものではありません。 単価や要件は年度改定で変わるため、金額の試算は必ず最新の公式資料と管轄の労働局への確認をもとに行ってください。

当社のAI研修では、助成金の要件に合う時間数・日程の組み方からご相談を承っています。

時間の計算に入る前に、その研修が自社に要るかを確かめる

対象時間の計算は、やると決めたあとの作業です。先に「その研修で何が変わるのか」が言えないと、計算が合っても効果は出ません。

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出典(2026年8月時点。単価・要件・限度時間は変更される場合があります。申請前に必ず公式情報および管轄の労働局にご確認ください)

よくある質問

賃金助成はどう計算しますか?
「1人1コース1時間あたりの単価 × 実訓練時間 × 人数」で計算します。単価はコースと企業規模で変わり、事業展開等リスキリング支援コースの中小企業では1人1時間あたり1,000円が目安です。
研修の拘束時間すべてが助成対象になりますか?
なりません。昼食などの休憩時間を除いたものが総訓練時間数、さらに移動時間や助成対象外のカリキュラムを除いたものが実訓練時間数です。助成の計算に使うのは実訓練時間数です。
土日や夜間に研修をしても賃金助成は出ますか?
原則として所定労働時間外に行われた訓練は賃金助成の対象外です。事前に所定労働時間そのものを変更し書面で通知しているなど例外的な扱いもあるため、日程を決める前に労働局へ確認してください。
助成される時間に上限はありますか?
1人1訓練あたり1,200時間(専門実践教育訓練は1,600時間)が限度とされています。通常のAI研修では上限に達することはまずありません。
助成額を増やす方法はありますか?
賃金要件(訓練修了後の賃金を5%以上引き上げる)または資格等手当要件を満たすと加算が受けられます。ただし加算される対象はコースで異なります。事業展開等リスキリング支援コースの支給要領(令和8年8月3日版)0504は、通常分を経費助成率75%(大企業60%)・賃金助成1,000円(同500円)と定めており、賃金要件等による加算の欄はありません。このコースで用意されている加算は設備投資加算(導入費用の50%・中小企業のみ)だけです。経費助成率が60%→75%に上がるのは人への投資促進コースの定額制訓練など、賃金助成に1時間あたり200円が上乗せされるのは同コースの情報技術分野認定実習併用職業訓練など、いずれも別のコースの話です。

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