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【落とし穴】事業内職業能力開発計画の書き方|添付書類に無いのに必須です

事業内職業能力開発計画と職業能力開発推進者は、職業能力開発促進法では努力義務です。ところが人材開発支援助成金の支給要領0301では、支給対象事業主の要件として並んでいます。しかも計画届の添付書類一覧には入っていないので、作らないまま提出できてしまう。要領と条文から、計画届の前に社内で揃える2つを整理しました。

佐野 泰規佐野 泰規株式会社AIエージェント 代表取締役約10分で読めます
会議テーブルに置かれた黒いバインダーと開いたノート、資料とマグカップ
Pexels / Ron Lach

この記事でわかること

  • 法律上は努力義務。事業内職業能力開発計画(能開法第11条)も職業能力開発推進者の選任(同第12条)も「努めなければならない」で、厚生労働省のページも事業主の努力義務と明記している
  • ところが人材開発支援助成金では支給対象事業主の要件。支給要領0301のイ・ロ・ニに、計画の作成と周知、そして推進者の選任が並んでいる
  • 一番の落とし穴は、計画届(様式第1-1号)の添付書類一覧に入っていないこと。0601イに列挙された書類のどこにも出てこないので、作らないまま提出できてしまう
  • 推進者は事業所ごとに選任する。ただし常時雇用する労働者が100人以下の事業所は専任である必要がない(施行規則第2条第2項)

社員のAI研修に人材開発支援助成金を使おうとして、最初に読むのはたいてい「訓練計画届を訓練開始日の1か月前までに出す」という手続きの話だと思います。

その手前に、社内で先に揃えておく前提が2つあります。 しかもこの2つは、計画届の添付書類の一覧に入っていません。つまり作らないまま提出できてしまう。

事業内職業能力開発計画の書き方の前に、法律上は努力義務だと知っておく

まず前提から。根拠は職業能力開発促進法(能開法)です。

(計画的な職業能力開発の促進) 第十一条 事業主は、その雇用する労働者に係る職業能力の開発及び向上が段階的かつ体系的に行われることを促進するため、第九条から第十条の四までに定める措置に関する計画を作成するように努めなければならない。

(職業能力開発推進者) 第十二条 事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる業務を担当する者(以下「職業能力開発推進者」という。)を選任するように努めなければならない。

——職業能力開発促進法(昭和44年法律第64号)(e-Gov法令検索・2026年9月2日閲覧。強調は筆者)

どちらも「努めなければならない」。厚生労働省のページも同じ書き方をしています。

人事・教育訓練等で担当部署の部・課長などを職業能力開発推進者として選任することが「職業能力開発促進法」第12条において、事業主の努力義務となっています。

——厚生労働省「職業能力開発推進者」(2026年9月2日閲覧。強調は筆者)

ここまでなら「うちは作らなくていい」で終わります。実際、努力義務なので、助成金を使わないなら罰則の話にはなりません。

助成金を使う瞬間に、努力義務は支給要件へ変わる

変わる場所が支給要領です。事業展開等リスキリング支援コースの0301を引きます。

0300 支給要件 0301 支給対象事業主 事業展開等リスキリング支援コースの対象となる事業主は、次のイからリまでの要件を満たす事業主とする。 イ 当該事業主の事業所の労働組合等の意見を聴いて作成した事業内計画をその雇用する労働者に周知した事業主であること。 ロ 当該事業内計画に基づき職業訓練実施計画を作成し、その雇用する被保険者に周知した事業主であること。 ニ 職業能力開発推進者を選任している事業主であること。

——人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)支給要領(令和8年8月3日版)(厚生労働省・2026年9月2日閲覧。強調は筆者)

ここで動詞を数えてください。「作成する」だけでは1つも満たしません。

  • イ … 労働組合等の意見を聴いて作成する + 労働者に周知する
  • ロ … 事業内計画に基づいて職業訓練実施計画を作る + 被保険者に周知する
  • ニ … 推進者を選任する

イとロで周知の相手が違う点も読み飛ばしやすいところです。事業内計画は「労働者」、職業訓練実施計画は「被保険者」。前者にはパート・アルバイトも含まれます。

「計画」という言葉が3つ出てくるので、先に整理する

助成金の書類で「計画」と呼ばれるものが3つあり、これが混乱の元です。

名前何の計画か根拠出す先
事業内職業能力開発計画会社全体の職業能力開発の方針・体系能開法第11条/要領0301イ社内(労働者に周知)
職業訓練実施計画一の訓練ごとに定める計画要領0200サ/0301ロ社内(被保険者に周知)
職業訓練実施計画届(様式第1-1号)上を労働局に届け出る書類要領0601イ(イ)管轄労働局長

支給要領0200サは職業訓練実施計画を「事業内計画に基づき(略)一の訓練ごとに定めるもの」と定義しています。上から下へ、この順で降りてくる構造です。

落とし穴はここです。0601イに列挙された計画届の添付書類には、事業内職業能力開発計画も、推進者を選任したことを示す書類も入っていません。 入っているのは様式第1-1号・事前確認書(様式第11号)・事業展開等実施計画(様式第1-3号)・対象労働者一覧・訓練カリキュラム等で、最後に「その他管轄労働局長が求める書類」が置かれているだけです。

つまり社内に何も無いまま計画届を出せてしまう。出せても、0301の要件は満たしていない。届出の期限は訓練計画届の1か月前ルールで守れても、ここが空なら土台のほうが抜けます。

事業内職業能力開発計画に何を書くか

様式は要領に定められていません。書く中身は能開法第11条の文言がそのまま設計図になります——「第九条から第十条の四までに定める措置に関する計画」です。開くと項目が5つ出てきます。

  1. 職業訓練(第9条)… 自社で行うのか、共同で行うのか、公共職業能力開発施設など外部の施設に受けさせるのか
  2. 教育訓練・職業能力検定(第10条)… 外部の教育訓練を受けさせる、技能検定などを受けさせる
  3. 実習併用職業訓練(第10条の2)… OJTと外部の訓練を組み合わせ、習得した技能の評価まで行う場合
  4. 情報提供・キャリアコンサルティング・配置への配慮(第10条の3)… 目標を立てやすくするための情報提供と、相談の機会の確保
  5. 教育訓練休暇・時間確保の措置(第10条の4)… 有給教育訓練休暇、長期教育訓練休暇、始業終業時刻の変更や勤務時間の短縮

AI研修を入れる会社なら、1と2に「生成AIの基礎」「業務での活用」といった訓練の体系を、4にキャリア面談の運用、5に受講時間の確保を書くことになります。自社にある制度をそのまま書けば足ります。無い制度は書かないでください——周知した内容と実態がずれるほうが後で困ります。

推進者は事業所ごとに選任する|100人以下は専任でなくてよい

推進者の選任のしかたは施行規則にあります。

(職業能力開発推進者の選任) 第二条 法第十二条の職業能力開発推進者の選任は、キャリアコンサルタントその他の同条各号の業務を担当するための必要な能力を有すると認められる者のうちから、事業所ごとに行うものとする。 2 常時雇用する労働者が百人以下である事業所又は二以上の事業主が共同して職業訓練を行う場合その他その雇用する労働者の職業能力の開発及び向上を共同して図ることが適切な場合における常時雇用する労働者が百人を超える事業所については、法第十二条の職業能力開発推進者は当該事業所の専任の者であることを要しないものとする。

——職業能力開発促進法施行規則(昭和44年労働省令第24号)(e-Gov法令検索・2026年9月2日閲覧。強調は筆者)

「事業所ごと」が効きます。複数拠点がある会社で本社だけ選任していると、他の事業所の申請で要件が欠けます。一方で100人以下なら兼任で構わないので、多くの中小企業では総務部長や人事労務担当の課長が兼ねる形で足ります。

誰を選ぶかは支給要領0200レが例示しています。「従業員の職業能力開発及び向上に関する企画や訓練の実施に関する権限を有する者」が望ましく、教育訓練部門がある事業所はその部課長、それ以外は人事労務担当部課長等。権限を持っている人という点だけ外さなければ大丈夫です。

計画届を出す前に、この5つを確認する

社内で揃えるものだけを並べます。書類の準備そのものは助成金でつまずくのは研修の中身ではなく書類にまとめてあります。

  1. 事業内職業能力開発計画がある(能開法第9条〜第10条の4に対応する項目で作ってある)
  2. その作成にあたって労働組合等の意見を聴いた(労働組合が無い会社は労働者の過半数を代表する者)
  3. 労働者に周知した(掲示・イントラ・書面の交付など、後から説明できる形で)
  4. 今回のAI研修について職業訓練実施計画を作り、被保険者に周知した(事業内計画に基づく形で)
  5. 職業能力開発推進者を、この事業所で選任している(100人以下なら兼任で可)

そのうえで様式第1-1号を出します。2026年8月3日改正で対象訓練の判定そのものが変わっているので、訓練の中身はリスキリング助成金の8月3日改正もあわせて確認してください。

受給を保証するものではありません。 助成金には審査があり、訓練開始前の計画届の提出が前提です。要件の当てはめは事業所の実態で変わるので、申請前に管轄の労働局に確認し、最新の公募要領・支給要領を必ずご自身で参照してください。

計画を書く前に、自社の現在地を出しておく

事業内職業能力開発計画は「何を教えるか」を書く紙です。ところが何を教えるべきかは、自社のどこが弱いかが分からないと決まりません。 全社にリテラシーが要るのか、特定部門の業務を変えるほうが先なのかで体系が変わります。

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出典

よくある質問

事業内職業能力開発計画は必ず作らないといけませんか?
職業能力開発促進法第11条は「計画を作成するように努めなければならない」と定めており、法律上は努力義務です。ただし人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)を使う場合は話が別で、支給要領0301イが「労働組合等の意見を聴いて作成した事業内計画をその雇用する労働者に周知した事業主であること」を支給対象事業主の要件としています。助成金を使うなら必須です。
事業内職業能力開発計画の様式はどこにありますか?
事業展開等リスキリング支援コースの支給要領には、事業内職業能力開発計画の様式が定められていません(要領に出てくる様式は様式第1-1号などの提出書類と参考様式第3号だけです)。したがって決まった書式はなく、能開法第9条から第10条の4までに定める措置に関する計画として自社で作ることになります。ひな形が必要な場合は管轄の労働局や都道府県職業能力開発協会に相談してください。
職業能力開発推進者は誰を選べばよいですか?
支給要領0200レは、従業員の職業能力開発および向上に関する企画や訓練の実施に関する権限を有する者を選任することが望ましいとし、具体例として、教育訓練部門の組織が確立されている事業所は当該組織の部課長、それ以外の事業所は人事労務担当部課長等を挙げています。また職業能力開発促進法施行規則第2条は、キャリアコンサルタントその他必要な能力を有すると認められる者のうちから事業所ごとに選任するとしています。
小さい会社でも専任の推進者が要りますか?
職業能力開発促進法施行規則第2条第2項は、常時雇用する労働者が100人以下である事業所については、職業能力開発推進者は当該事業所の専任の者であることを要しないとしています。つまり兼任で差し支えありません。ただし「選任していない」は要件を満たさないので、誰を選任したのかは社内で明確にしておいてください。
事業内職業能力開発計画は計画届と一緒に出すのですか?
支給要領0601イに列挙された計画届の添付書類には、事業内職業能力開発計画も推進者の選任を示す書類も入っていません。ただし同じ0601イには「その他管轄労働局長が求める書類」という項目があり、求められれば提出することになります。提出しないから作らなくてよい、という意味ではありません。

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