人材開発支援助成金 様式第28号(疎明書)|署名するのは受講する企業です
人材開発支援助成金の3コース(人材育成支援・人への投資促進・事業展開等リスキリング支援)で、2026年5月14日以降に計画届を出した分から、支給申請時に様式第28号「受講料等の価格設定に関する疎明書」の提出が必要になりました。厚労省の様式の全文を引いて、何を申告させられるのか、発注する側が事前に何を残しておくべきかを整理します。研修の売り手である当社を含めて、価格を疑う方法を書きました。

この記事でわかること
- 2026年5月14日以降に計画届を提出した分から、支給申請時に様式第28号「受講料等の価格設定に関する疎明書」が必要。対象は人材育成支援コース・人への投資促進コース・事業展開等リスキリング支援コースの3つ
- 署名するのは研修会社ではなく、受講する企業の代表者。「研修会社が適正だと言っていた」は通らない
- 同じ主旨を3つの時点(決定時・支給申請時・疎明書提出時)について申告させる構造。発注時に確認して終わりではない
- 比較の物差しは「同一の訓練内容を提供する他の講座等」。他社講座の価格を1つも見ていないと、申告の根拠がない
助成金を使ってAI研修を入れようとしている会社にとって、2026年に静かに増えた書類がひとつあります。
様式第28号「受講料等の価格設定に関する疎明書」です。名前だけ見ると事務的な追加書類ですが、中身を読むと発注する側の責任が一段重くなっていることが分かります。
今日はこの様式の全文を引いて、何を申告させられるのか、そのために発注の時点で何を残しておくべきかを書きます。研修を売っている当社が書く記事なので、自社を含めて価格を疑う方法という形にします。
※助成金の要件は改正されます。申請前に必ず厚生労働省の最新の様式と要領をご確認ください。受給を保証するものではありません。
人材開発支援助成金の様式第28号は、2026年5月14日から必要になりました
まず、いつから・どのコースで必要なのかを事実で押さえます。
厚生労働省の「人材開発支援助成金の申請書類一覧」は、計画届をいつ提出したかで書類一式が分かれています。 当社が確認した時点で公開されている区分を、様式第28号が入っているかどうかで並べるとこうなります。
| 計画届の提出時期 | 様式第28号 |
|---|---|
| 令和8年8月3日以降 | あり |
| 令和8年5月14日〜令和8年8月2日 | あり |
| 令和8年4月8日〜令和8年5月13日 | なし |
| 令和8年3月2日〜令和8年4月7日 | なし |
| 令和7年4月1日〜令和8年3月1日 | なし |
境目は令和8年(2026年)5月14日です。 それ以降に計画届を出した分から、この様式が一式に加わっています。
対象コースは3つでした。様式一覧にはコース名入りで別々に置かれています。
- 人材開発支援助成金(人材育成支援コース)受講料等の価格設定に関する疎明書
- 人材開発支援助成金(人への投資促進コース)受講料等の価格設定に関する疎明書
- 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)受講料等の価格設定に関する疎明書
AI研修で使われることが多いのは3つ目の事業展開等リスキリング支援コースなので、AI研修を助成金で入れる会社はほぼ全部この様式に当たります。
提出のタイミングは支給申請時です。厚労省の様式一覧では「[2] 支給申請を行う場合」の区分に置かれています。計画届の段階では出しません。
様式には何が書いてあるのか(全文)
短い様式なので、本文をそのまま引きます。ここを読まずに「また書類が増えた」で処理すると、後で困ります。
受講料等の価格設定に関する疎明書
労働局長 殿
1.当社は、支給申請の対象となる訓練の受講料等について、教育訓練機関等から提示された金額を基に、通常の取引慣行及び社内手続に従って確認を行い、適正に決定しました。
2.当社は、支給申請の対象となる訓練の受講料等について、その決定時及び支給申請時のいずれの時点においても、当該訓練と同一の訓練内容を提供する他の講座等と比較して、助成金の有無により不合理な価格差が生じているなど、合理性を欠く価格差が存在しているとの認識はありませんでした。
3.当社は、本疎明書提出時点においても、他の講座等と比較して、合理性を欠く価格差が存在しているとの認識はありません。
上記内容に相違ありません。
令和 年 月 日/事業主名/所在地/代表者氏名/計画届の受付番号
——厚生労働省「様式第28号 受講料等の価格設定に関する疎明書」(2026年8月24日閲覧・強調は筆者)
読んで最初に思ったのは、同じことを3回、時点を変えて書かせているなということでした。ここが一番効くところなので、分解します。
3つの時点で聞かれている、という構造
第2項と第3項は一見すると重複していますが、申告の対象になっている時点が違います。
| 項 | いつの時点について | 実務上の意味 |
|---|---|---|
| 1項 | 受講料を決めたとき | 通常の取引慣行と社内手続に従って確認したか |
| 2項 | 決定時 および 支給申請時 | 発注してから申請までの間も、価格差の認識が無かったか |
| 3項 | 疎明書を出す時点 | 今この瞬間も、認識が無いか |
つまり「発注のときに確認したから大丈夫」では足りない設計になっています。訓練が終わって支給申請するまでには数か月かかりますから、その間に同じ研修の相場が動いていたり、その研修会社が助成金なしの客に別の値段で売っていることを知ってしまったりする可能性がある。それも含めて申告させる形です。
私はこれを、「知らなかった」で逃げられる範囲を狭める作りだと読みました。 3つの時点それぞれで「認識はなかった」と代表者名で書かせているので、後から「そういえば途中で気づいていた」は通りにくい。
署名するのは研修会社ではなく、あなたの会社です
もうひとつ、見落としやすいところです。
様式の署名欄は 事業主名・所在地・代表者氏名です。つまり助成金を申請する側=研修を受ける企業が、代表者の名前で出します。訓練を提供した教育訓練機関が書く書類ではありません。
第1項の言い方も、それを前提にしています。「教育訓練機関等から提示された金額を基に、通常の取引慣行及び社内手続に従って確認を行い」——提示されたものを、自社が確認して決めた、という構成です。
なので「研修会社が適正価格だと言っていました」は、この様式に対する答えになりません。自社として何を確認したかが要ります。
そして「社内手続に従って」という文言がある以上、その社内手続の痕跡が残っているかは当然の論点になります。稟議書でも、相見積もりの比較表でも、担当者のメールでも構いませんが、何も無いよりはあったほうがいい。
「助成金の有無により不合理な価格差」が狙われています
第2項の核心はここです。
当該訓練と同一の訓練内容を提供する他の講座等と比較して、助成金の有無により不合理な価格差が生じているなど
名指しされているのは、助成金が出るからという理由で価格を上げるという値付けです。同じ内容の研修が、助成金を使う客には高く、使わない客には安く売られている——という状態を問題にしている。
これは研修を売っている側から見ると、なかなか痛いところを突いた条文だと思います。助成率が高いコースほど、発注側は「実質負担が小さいからいいか」と判断しやすい。そこに価格を寄せていく力が働くのは、構造上そうなりやすいところです。
だから逆に言うと、発注側が見るべき点は1つに絞れます。
その研修会社は、助成金を使わない客に、同じ内容をいくらで売っているのか。
これが分かれば、第2項の申告の根拠として一番強い。聞きにくい質問ではありますが、疎明書に代表者名で署名する立場になった以上、聞く理由はできました。
発注前に残しておくチェックリスト
様式の3項目を、発注の実務に変換します。支給申請の直前に集めようとすると間に合わないものを上に置きました。
| 残すもの | どの項に効くか | 具体的に |
|---|---|---|
| 同等内容の他社講座の価格(2社以上) | 2項・3項 | 見積書か価格ページの写し。比較した日付を入れる(時点の申告なので日付が要る) |
| 助成金なしの場合の価格(同じ研修会社) | 2項 | 「助成金を使わない場合はいくらですか」と書面で聞く。メールで残す |
| 社内の決裁記録 | 1項 | 稟議書・決裁メール。金額と、なぜその会社を選んだかの理由 |
| 見積書の内訳 | 1項 | 一式ではなく、日数・講師・教材・オンライン費用の内訳。一式見積もりは根拠にならない |
| カリキュラムの明細 | 2項 | 「同一の訓練内容」を比較するための材料。時間数と単元 |
| 支給申請前の再確認メモ | 2項・3項 | 申請の直前に、相場が動いていないかをもう一度見た記録 |
一番下が抜けやすいところです。2項は「支給申請時」も対象なので、訓練が終わってから申請するまでの間に一度見直しておくのが筋になります。5分で終わる作業なので、支給申請の書類を作る日のチェック項目に入れておくのがいいと思います。
当社の価格も、この物差しで見てください
研修を売っている会社がこの記事を書いている以上、自社に触れないのは不誠実だと思うので書きます。
当社に発注する場合も、上の表のとおりに他社と比較してください。 特に「助成金なしの場合いくらか」は遠慮なく聞いてください。同じ内容なら同じ金額です、と答えられる状態にしておくのが売り手の責任だと考えています。
当社がAI見積もりを公開して、その場で金額が出るようにしているのも同じ理由です。問い合わせないと価格が分からない状態は、相手によって値段を変えられる状態でもあります。 疎明書のような書類が出てきた以上、価格が最初から見えていることの意味は、以前より大きくなったと思っています。
研修の中身と進め方はAI研修のページにまとめています。
この様式が出てきた背景をどう読むか
推測になるので、そう分かる形で書きます。
助成率の高い制度では、助成金を前提にした価格の上乗せが起きやすい。これは研修に限らず、補助金がつく商材で繰り返し指摘されてきた構図です。ただ、それを行政が個別に価格査定するのは現実的ではありません。件数が多すぎる。
そこで申請する側に代表者名で申告させるという形にした——という読み方が素直だと思います。査定するのではなく、責任の所在をはっきりさせる。3つの時点に分けているのも、逃げ道を狭めるという意味では一貫しています。
ここから実務的に言えるのは、この流れは今後も緩まないだろうということです。であれば、価格の根拠を残す習慣は今のうちに作っておいたほうがいい。疎明書のためというより、次に何かが追加されたときにも同じ材料が使えるからです。
助成金の要件そのものは2026年8月3日にも改正されています。訓練の中身が対象になるかどうかの線引きはリスキリング助成金の改正の記事にまとめました。不支給になる理由の型はこちらの記事、計画届の締切から逆算するスケジュールはこちらの記事にあります。
最後に念のため。助成金には審査があり、要件を満たしていても支給されるとは限りません。 また訓練開始前に計画届の提出が必要です。この記事は要件の解説であって、受給を保証するものではありません。
書類の前に、研修の中身が決まっているか
様式第28号は「受講料の価格設定を説明する書類」なので、そもそも何をいくらで受けるかが決まっていないと書けません。 順番としては研修の中身が先です。
当社のAI研修は1名6万円(税別)からで、人材開発支援助成金を使った場合の実質負担は1.5万円/名〜になります。プランごとの時間数と計算の根拠はAI研修のページに置いてあります。助成金の要件である10時間以上を満たす形で組んであるので、様式第28号の説明もそのまま書けます。
「誰にどこまで教えるべきか」から迷っているなら、AI適合度診断を先に。10問で自社の現在地が点数になります。連絡先の入力は要りません。
出典(すべて2026年8月24日閲覧)
- 人材開発支援助成金の申請書類一覧|厚生労働省 — 計画届の提出時期ごとの書類一式。様式第28号が含まれる区分の境目を確認
- 申請書類(令和8年8月3日以降に計画届を提出された方)|厚生労働省 — 様式第28号が3コースに置かれていること、「支給申請を行う場合」の区分であることを確認
- 様式第28号 受講料等の価格設定に関する疎明書(Word)|厚生労働省 — 本文の引用元
- 人材開発支援助成金|厚生労働省
制度は改正されます。申請にあたっては必ず最新の様式・支給要領と、管轄の労働局・ハローワークの案内をご確認ください。
よくある質問
- 様式第28号はいつから必要になったのですか?
- 厚生労働省の申請書類ページを見ると、様式第28号は「令和8年5月14日から令和8年8月2日までに計画届を提出された方」以降の書類一式に含まれており、それより前(令和8年4月8日〜5月13日など)の一式には含まれていません。つまり2026年5月14日以降に計画届を提出した分から必要になったと読めます。ご自身の計画届の提出日がどの区分に入るかを、厚労省の申請書類ページで確認してください。
- どのコースで必要ですか?
- 厚労省の様式一覧に様式第28号が置かれているのは、人材育成支援コース・人への投資促進コース・事業展開等リスキリング支援コースの3コースです。教育訓練休暇等付与コースなど、訓練の受講料が発生しない類型には置かれていません。
- 提出のタイミングは計画届のときですか?
- 支給申請のときです。厚労省の様式一覧では「[2] 支給申請を行う場合」の区分に置かれています。ただし申告する内容は受講料を決めた時点まで遡るので、実務上は発注のタイミングで根拠を残しておく必要があります。
- 研修会社に書いてもらえばよいのですか?
- 様式の署名欄は事業主名・所在地・代表者氏名で、提出するのは助成金を申請する事業主です。訓練を提供した側ではありません。したがって「研修会社が適正価格だと言っていた」では申告の根拠になりません。自社として確認した記録が要ります。
- 何を根拠に「不合理な価格差はない」と言えばよいのですか?
- 様式が挙げている比較対象は「当該訓練と同一の訓練内容を提供する他の講座等」です。少なくとも同等の内容の他社講座の価格を見て、その記録(見積書・価格ページの写し・比較した日付)を残しておくのが現実的です。加えて、その研修会社が助成金を使わない客に同じ内容をいくらで売っているかを確認しておくと、「助成金の有無による価格差」という論点に直接答えられます。
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