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【介護施設】生成AIに入れたらアウトな情報、分かってますか?

介護施設で生成AIを使うとき、最初に決めるべきは「どのサービスなら入れられるか」です。介護記録は病歴を含むため個人情報保護法上の要配慮個人情報にあたり、取得には原則として本人の同意が要ります。条文と個人情報保護委員会の注意喚起をもとに、職種別の入力可否と社内ルールの作り方を整理しました。

佐野 泰規佐野 泰規株式会社AIエージェント 代表取締役約9分で読めます
手すりの付いた介護施設の廊下と、隅に置かれた車椅子
Pexels / Zakir Rushanly

この記事でわかること

  • 介護記録は「病歴」を含むため要配慮個人情報にあたる。個人情報保護法は要配慮個人情報の取得に原則として本人の同意を求めており、通常の個人情報より一段厳しい
  • 分岐点は「入力してよいか」ではなく「そのサービスが入力内容を機械学習に使わないか」。個人情報保護委員会は、応答以外の目的で取り扱われる場合に法違反となり得るとして、事前確認を求めている
  • 職種で線を引く。介護職・相談員・ケアマネ・事務で扱う情報が違うため、全社一律のルールは機能しない
  • 記録は完結の日から2年間保存が必要。AIが作った下書きを「記録」にする前に、誰が確認して確定させるかを決めておく

「介護記録の下書きをAIに書かせたいんですが、まずいですか」——介護施設の方から、この相談が増えています。

先に結論を言います。まずいかどうかは、入力する側ではなく、使うサービス側で決まります。介護記録は要配慮個人情報にあたると考えるべきで、通常の個人情報より一段厳しい扱いが求められる。だから「入れていいか」を職員に判断させる前に、そのサービスが入力内容を機械学習に使わない設定になっているかを経営側が確認するのが順番です。

制度は改正されるため、最終的な判断は最新の条文と所管の窓口でご確認ください。

介護施設で生成AIに入れてよい情報とだめな情報の分かれ目

まず、介護記録が法律上どう位置づけられるか。個人情報保護法の定義はこうです。

この法律において「要配慮個人情報」とは、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報をいう。

——個人情報の保護に関する法律 第二条第三項(e-Gov法令検索、2026年8月20日閲覧)

「病歴」が明示されています。介護記録には既往歴、服薬、認知症の症状、褥瘡の状態といった心身の状況が当然のように書かれる。該当すると考えるのが安全です。

要配慮個人情報が普通の個人情報と何が違うか。取得のルールが違います。

個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、要配慮個人情報を取得してはならない。

——同法 第二十条第二項(例外として、法令に基づく場合/人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって本人の同意を得ることが困難であるとき、などが列挙されています)

つまり、原則は「あらかじめ本人の同意」。介護事業者は利用契約の中で個人情報の取扱いについて同意を得ているはずですが、その同意書に「生成AIサービスへの入力」が読み込める文言になっているかは、別問題です。

「AIに入力すること」が問題になるのはどういう場合か

ここが実務の分岐点です。個人情報保護委員会は2023年6月2日に「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」を公表しています。個人情報取扱事業者向けの要点は、次のように整理できます(要旨。原文は下記リンク先をご確認ください)。

  • プロンプトに個人情報を含む入力を行い、その個人データが応答以外の目的(機械学習など)で取り扱われる場合、個人情報保護法違反となる可能性がある
  • したがって、そうした入力を行う場合は、生成AIサービス提供者が入力内容を機械学習に利用しないことを十分に確認する必要がある

この一文が、介護施設のルール作りの全部です。「個人情報を入れるな」と言うより、「機械学習に使われない契約のサービスを会社が用意し、それ以外は使わせない」ほうが、現場は圧倒的に守りやすい。

私が施設の方に最初に聞くのはこの2点です。

  1. 職員が使っているのは、会社が契約したアカウントか、個人の無料アカウントか
  2. その契約で、入力内容が学習に使われない設定になっているか(利用規約とサービス設定の両方)

2番目まで確認できていない状態で「記録の下書きに使っていいですよ」と言ってしまうのが、いちばん危ない。逆に、ここさえ押さえてしまえば、あとの線引きはずっと楽になります。

職種で線を引く。全社一律のルールは機能しません

「個人情報は入れない」の一行だけで済ませたルールは、まず守られません。現場が扱う情報の種類が、職種でまったく違うからです。

私なら、こう分けます。

職種入れてよいマスキングして入れる入れない
介護職一般的な介助方法の調べもの、記録の書き方の相談個人が特定できない形にした状況(「90代女性、夜間の不穏」等)氏名・居室番号つきの記録本文
生活相談員制度の調べもの、文例の作成家族対応の相談内容を匿名化したもの家族構成・金銭・トラブルの経緯そのまま
ケアマネジャー様式の書き方、アセスメント項目の整理個人が特定できない形の課題整理主治医意見書・サービス担当者会議の記録本文
事務・総務求人票、社内文書、シフトの考え方—職員の人事評価・健康情報、利用者の請求データ
管理者運営基準の調べもの、研修資料の作成匿名化した事例検討事故報告書・苦情記録の本文

この表を配ったうえで、迷ったときに聞く相手を1人決めておく。これが効きます。決まっていないと、職員は誰にも聞けずに「たぶん大丈夫」で入れてしまう。AIガバナンスの考え方そのものはAIガバナンス認証「C認証」の審査4項目に整理しましたが、審査4項目のうち「リスク対応組織の設置」がまさにこの相談先のことです。

「名前を消せば大丈夫」ではない

マスキングのルールを作るとき、氏名だけを対象にすると穴が残ります。生年月日、居室番号、特徴的な既往歴、家族構成——これらの組み合わせで個人は特定できます。しかも施設の中では、「3階の、去年骨折した方」で全員に通じてしまう。

だからマスキングは「氏名を消す」ではなく、何を消すかを列挙してルールにしてください。列挙されていないルールは、判断を現場の一人ひとりに預けることになり、結局は運用されません。

AIが作った下書きは、まだ「記録」ではない

見落とされがちな論点をひとつ。介護記録には保存義務があります。

指定訪問介護事業者は、利用者に対する指定訪問介護の提供に関する次の各号に掲げる記録を整備し、その完結の日から二年間保存しなければならない。

——指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第三十九条第二項(e-Gov法令検索、2026年8月20日閲覧)

つまり記録は、あとから見返される前提の公式な文書です。AIが生成した文章をそのまま記録にしてしまうと、事実と違う記述が2年間残ることになります。実際に起きやすいのは、AIが文章を整える過程で実際には無かった様子を補ってしまうパターンです。

対策はシンプルで、「誰が確認して確定させるか」を決めること。下書きはAI、確定は人。当たり前に聞こえますが、この一線を明文化していない施設が多い。運用としては、下書きのままの記録を保存できない仕組み(確認欄のチェックがないと保存できない等)にしてしまうのが確実です。

なお自治体によっては2年より長い保存を求める場合があります。指定権者の条例は確認してください。

研修に落とすときのポイント

ルールを配っただけでは、まず定着しません。判断が毎日発生する類のものだからです。

研修を設計するなら、職種ごとに分けてください。介護職に主治医意見書の話をしても関係がありませんし、ケアマネに介助方法の調べ方を教えても薄い。上の表をそのまま研修の単位にするのが手っ取り早いです。

これは助成金の面でも効きます。人材開発支援助成金は2026年8月3日の支給要領改正で対象労働者の職務に直接必要な内容かどうかが厳しく見られるようになりました。「全職員向けAIリテラシー研修」という括りより、「介護職向け・記録業務でのAI活用」のほうが、要件の説明がしやすい。改正の中身は2026年8月3日改正のポイントにまとめています。ただし助成金には審査があり、訓練開始前の計画届が前提です。受給が確約されるものではありません。

研修会社を選ぶときの見方はAI研修会社の選び方チェックリスト12項目に整理しました。弊社のAI研修も、職種別にカリキュラムを分ける前提で設計しています。

最初の30日でやること

  1. 1週目 — 職員が使っているAIツールを全部書き出す。個人アカウントの無料版も含めて聞き取る
  2. 2週目 — 会社として使うサービスを決め、入力内容が機械学習に使われない設定・契約であることを確認する
  3. 3週目 — 上の職種別の表を自施設向けに作る。マスキング対象を列挙する
  4. 4週目 — 相談先を1人決めて周知し、職種別に読み合わせる

順番が大事です。2週目を飛ばして3週目から始めると、ルールを作っても土台が抜けたままになります。

制度・条文は改正されます。実際の運用を決める前に、最新の条文と、所管の自治体・個人情報保護委員会の公表資料をご確認ください。

ルールを配る前に、現場のどこにAIを入れるかを決める

ルールだけが先に配られると、現場は「使わない」を選びます。どの作業で使うかがセットになって初めて守られます。

AI適合度診断は10問の選択式で、その場で点数が出ます。連絡先の入力は要りません。 記録・申し送りを仕組み側で替えるなら、AI概算見積もり(無料・約3分)で金額の当たりが付きます。


出典(2026年8月20日閲覧。制度・条文は改正される場合があります)

よくある質問

介護記録を生成AIに入力してもいいですか?
サービスの選び方次第です。介護記録は利用者の心身の状況を含み、個人情報保護法上の「要配慮個人情報」にあたると考えられます。個人情報保護委員会は、プロンプトに入力した個人データが応答以外の目的(機械学習など)で取り扱われる場合に法違反となり得るとして、入力前に機械学習に利用されないことを十分に確認するよう求めています。まず契約とサービス設定の確認が先です。
要配慮個人情報とは何ですか?
個人情報保護法第2条第3項で「本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報」と定義されています。介護記録は病歴に関わる記述を含むことが多く、該当すると考えるのが安全です。
利用者の名前を伏せれば生成AIに入れても大丈夫ですか?
氏名を消しただけでは足りない場合があります。生年月日・居室番号・特徴的な既往歴・家族構成などの組み合わせで個人が特定できることがあるためです。施設内では「Aさん」で通じてしまう点にも注意が必要です。マスキングのルールは、何を消すかを具体的に列挙して文書化してください。
介護記録は何年保存する必要がありますか?
指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準では、利用者に対するサービスの提供に関する記録を整備し「その完結の日から二年間保存しなければならない」とされています(訪問介護の場合、第39条第2項)。自治体によってはこれより長い保存を求める場合があるため、指定権者の条例もご確認ください。
職員向けのルールはどう決めればいいですか?
職種ごとに分けてください。介護職・生活相談員・ケアマネジャー・事務では扱う情報の種類が違うため、全社一律の「個人情報は入れない」だけでは現場が判断できません。職種別に「入れてよい情報」「マスキングして入れる情報」「入れない情報」を列挙した表を作り、迷ったときの相談先を1人決めておくのが実務的です。

助成金を使えば、実質1/4

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