【要注意】見積が遅い? 建設業法は5,000万円で15日以上と定めています
見積が遅い原因を社内の段取りだけで探すと、直せない部分に手を付けてしまいます。建設工事には建設業法第20条第3項と施行令第五条の九が定めた見積期間があり、5,000万円以上なら15日以上。縮めてよい時間と、法令が縮めることを想定していない時間を条文から分けて整理しました。

この記事でわかること
- 建設業法第20条第3項は、注文者に対して「建設業者が見積りをするために必要な期間として政令で定める期間を設けなければならない」と義務づけている
- 施行令第五条の九の見積期間は、予定価格500万円未満で1日以上、500万円以上5,000万円未満で10日以上、5,000万円以上で15日以上。短縮できるのは「やむを得ない事情」があるときの5日以内だけ
- 同条第1項が求めている見積書は、材料費・労務費などの内訳に加えて「工事の工程ごとの作業及びその準備に必要な日数」を書いたもの。速さではなく中身を求めている
- だから「見積が遅い」は、法令が置いた期間・積算にかかる時間・社内の待ち時間の3つに分けて数える。AIで縮められるのは3つ目が中心
見積が遅い、という話には2つの原因が混ざっています。社内の段取りの問題と、法令が置いた期間です。
後者を段取りの問題だと思って詰めると、直せないものに手を付けることになります。建設工事の場合、その期間は日数まで政令に書いてあります。
見積が遅い、の中身を時間に分解する
まず、遅さの中身を3つに分けます。
| 種類 | 中身 | 縮められるか |
|---|---|---|
| ① 法令が置いた期間 | 注文者が設けなければならない見積期間 | 縮められない(例外は下記) |
| ② 積算にかかる時間 | 数量を拾い、単価を当て、工程ごとの日数を出す | 部分的に |
| ③ 社内の待ち時間 | 図面が担当者の手元で止まる、過去見積を探す、転記する | ここが主戦場 |
「見積が3日出てこない」と言うとき、そのうち何日が①で、何日が③なのかを分けずに話していることがほとんどです。分けないと、AIを入れても効かない場所に入れることになります。
建設業法が定めている見積期間は、1日・10日・15日
条文から引きます。まず義務の側です。
建設工事の注文者は、請負契約の方法が随意契約による場合にあつては契約を締結するまでに、入札の方法により競争に付する場合にあつては入札を行うまでに、第十九条第一項各号(第二号を除く。)に掲げる事項について、できる限り具体的な内容を提示し、かつ、当該提示から当該契約の締結又は入札までの間に、建設業者が当該建設工事の見積りをするために必要な期間として政令で定める期間を設けなければならない。
——建設業法 第20条第3項
その「政令で定める期間」が、施行令に日数で書かれています。
(建設工事の見積期間) 第五条の九 法第二十条第三項に規定する見積期間は、次に掲げるとおりとする。ただし、やむを得ない事情があるときは、第二号及び第三号の期間は、五日以内に限り短縮することができる。 一 工事一件の予定価格が五百万円に満たない工事については、一日以上 二 工事一件の予定価格が五百万円以上五千万円に満たない工事については、十日以上 三 工事一件の予定価格が五千万円以上の工事については、十五日以上
——建設業法施行令 第五条の九
表にするとこうなります。
| 工事1件の予定価格 | 見積期間 | やむを得ない事情がある場合 |
|---|---|---|
| 500万円未満 | 1日以上 | 短縮の規定なし |
| 500万円以上 5,000万円未満 | 10日以上 | 5日以内に限り短縮可 |
| 5,000万円以上 | 15日以上 | 5日以内に限り短縮可 |
注目したいのは、ただし書きが第2号と第3号にしか掛かっていないことです。500万円未満の1日には短縮の規定がありません。そして短縮の幅も「5日以内」で頭打ちなので、5,000万円の工事を3日で出させる形は、条文の組み立てから外れます。
起点も条文が決めています。「当該提示から当該契約の締結又は入札までの間」なので、数え始めるのは注文者が第19条第1項各号の内容を具体的に提示した時点です。図面や仕様が固まらないまま日数だけ過ぎている期間は、この期間に入りません。
第20条が求めているのは、速さではなく内訳
同じ第20条の第1項は、見積書の中身のほうを定めています。
建設業者は、建設工事の請負契約を締結するに際しては、工事内容に応じ、工事の種別ごとの材料費、労務費及び当該建設工事に従事する労働者による適正な施工を確保するために不可欠な経費として国土交通省令で定めるもの(中略)その他当該建設工事の施工のために必要な経費の内訳並びに工事の工程ごとの作業及びその準備に必要な日数を記載した建設工事の見積書(中略)を作成するよう努めなければならない。
——建設業法 第20条第1項(強調は筆者)
工程ごとの作業日数まで書いた見積書を作れ、という要求です。金額だけの1枚では足りません。
第2項は、その材料費等の額が「通常必要と認められる材料費等の額を著しく下回るものであつてはならない」としています。第6項は注文者がそういう変更を求めることを禁じ、第7項は違反した発注者に対して国土交通大臣または都道府県知事が必要な勧告をすることができるとしています。
私はこの並びを、「速く安く出させる」方向に圧力がかからないよう作られた条文だと読みました。だとすると、見積のリードタイムを短くすること自体を目標に置くのは、そもそも制度の向きと逆です。目標に置くべきは③の待ち時間で、①と②は減らす対象ではありません。
縮めてよい時間と、縮めてはいけない時間
分けると、手を付ける場所がはっきりします。
| 時間 | 例 | 打ち手 |
|---|---|---|
| ①法令の期間 | 5,000万円の工事で15日 | 触らない。短縮はやむを得ない事情がある場合の5日以内まで |
| ②積算 | 数量拾い、単価の当てはめ、工程日数の算出 | 過去実績の単価を引きやすくする。判断そのものは人が持つ |
| ③待ち時間 | 図面が担当者の机で止まる/過去見積を探す/Excelへ転記する/再計算する | ここを削る。多くの会社でいちばん長い |
③の中身は会社ごとに違うので、まず数えるところからです。見積依頼が来てから提出までを、「誰の手元にあったか」で区切って記録するだけで、待ち時間が何日あるかは1か月で見えます。特別な仕組みは要りません。
AIに渡してよい工程、渡してはいけない工程
そのうえで、どこにAIを当てるかです。
渡してよいものは、過去の見積・実績原価から似た工事を探す、仕様書や図面から数量拾いの下ごしらえをする、社内の様式へ転記する、金額の桁や合計の検算をする——人が確認できる形で出てくる作業です。
渡してはいけないものは、単価と工程日数の最終決定です。第20条第1項が求めているのは工程ごとの作業日数まで含む内訳で、第2項がその額に下限の考え方を置いています。この2つは、根拠を説明できる人が持っていないと成立しません。 AIの出力をそのまま提出用の数字にすると、後で「なぜこの単価か」に答えられなくなります。
電子データで見積を残す場合の保存要件は見積書の自動化と電子帳簿保存法にまとめています。受け取る側として見積を読むときの視点は見積書の「一式」をそのまま承認しないを参照してください。
自社のどこに時間が溜まっているかを、先に数えておく
ここまでの話は「①②③のどれを縮めようとしているのかを分ける」に尽きます。分けないまま道具を入れると、触ってはいけない時間に手が伸びます。
自社がAIをどこまで使える状態にあるかは、AI適合度診断の10問で点数として出ます。連絡先の入力は要りません。 見積や積算まわりを仕組みにすることを具体的に考えている段階なら、AI見積もりが約3分で、一般的なSIerに発注した場合の相場と当社の概算を並べて出します。作り方の考え方はAI受託開発にまとめてあります。
出典
- 建設業法(昭和二十四年法律第百号)第20条(e-Gov法令検索・2026年9月7日閲覧。法令ID
324AC0000000100はe-Gov法令APIで検証) - 建設業法施行令(昭和三十一年政令第二百七十三号)第五条の九(e-Gov法令検索・2026年9月7日閲覧。法令ID
331CO0000000273)
条文は引用時点のものです。制度は改正されることがあるため、実際の契約にあたっては最新の条文と、許可を受けている行政庁の指導を確認してください。
よくある質問
- 見積を3日で出してほしいと言われました。問題はありますか?
- 建設工事で予定価格が500万円以上なら、建設業法施行令第五条の九が定める見積期間は10日以上(5,000万円以上は15日以上)です。同法第20条第3項は注文者にこの期間を設けることを義務づけているため、3日での提出を求める形は制度の想定から外れます。やむを得ない事情がある場合の短縮も5日以内が限度とされています。
- 見積期間はどの時点から数えますか?
- 第20条第3項は、随意契約なら契約を締結するまでに、入札なら入札を行うまでに、第19条第1項各号(第2号を除く)の事項をできる限り具体的に提示し、その提示から契約締結または入札までの間に見積期間を設けるとしています。つまり起点は「具体的な内容の提示」です。
- 500万円未満の工事なら1日でよいのですか?
- 施行令第五条の九第1号は「1日以上」としています。ただしこれは下限であって、1日で十分という意味ではありません。第20条第1項は工程ごとの作業日数まで記載した見積書の作成を求めており、その中身を作れる時間が要ります。
- 見積の金額を下げるよう求められた場合はどうなりますか?
- 第20条第2項は、材料費等の額が「通常必要と認められる材料費等の額を著しく下回るものであつてはならない」としています。第6項は注文者がそのような変更を求めることを禁じ、第7項は違反した発注者に対して国土交通大臣または都道府県知事が必要な勧告をすることができるとしています。
- AIで見積作成をどこまで速くできますか?
- 法令が置いた見積期間と、積算そのものに必要な時間は縮める対象ではありません。縮められるのは、図面や仕様が担当者の手元で止まっている待ち時間、過去見積を探す時間、転記と再計算の時間です。自社のどこに時間が溜まっているかを先に数えてください。
自社の場合、いくら?
建設業の業務は例外処理が多く、要件が固まりきる前ほど見積もりがぶれます。作りたいものを入力すると、AIが約3分で概算を出します。無料で、営業からのしつこい連絡はありません。「そもそも作る価値があるか」の段階でも構いません。
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