株式会社AIエージェント
業務システム運送業システム連携

【運送業】点呼記録を1画面で作ると「交替時の通告」が抜けます…監査で発覚

運送業の点呼記録をシステム化するとき、最初に決めるべきは画面ではなくデータ項目です。貨物自動車運送事業輸送安全規則第7条が定める記録事項と1年間の保存義務、乗務前・乗務後・中間で確認内容が違う点、アルコール検知器の「営業所ごと」要件が設計に効く理由を、条文を引きながら整理しました。

佐野 泰規佐野 泰規株式会社AIエージェント 代表取締役約9分で読めます
物流倉庫のバースに並んで停車する大型トレーラー
Pexels / Tom Jackson

この記事でわかること

  • 記録項目は法令で決まっている。点呼を行った旨・報告・確認・指示の内容に加え、①点呼者と運転者等の氏名②車両の登録番号等③点呼の日時④点呼の方法⑤その他必要な事項。保存は1年間
  • 乗務前・乗務後・中間で確認する内容が違う。同じ画面で使い回すと、乗務後にしか出ない「交替時の通告」が抜ける
  • アルコール検知器は営業所ごとに備え常時有効に保持する必要がある。どの営業所の検知器を使ったかを記録できる設計にしておくと監査で強い
  • 「対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法」が条文にあり、遠隔点呼はこの枠組み。将来の遠隔化を想定するなら点呼の方法を最初から選択式で持つ

「点呼簿、そろそろ紙をやめたい。何から決めればいいのか」——検索でもよく見かける問いです。ただ、私がまず考えるのは画面の話ではありません。先に決めるのは、法令が求めている記録項目です。

理由は単純で、点呼記録は何を残すかが法令で決まっているからです。ここを確定させずに「使いやすい入力画面」から作り始めると、監査で足りないと言われて作り直すことになります。順序を逆にすると、そうなりやすい構造になっています。

法令は改正されるので、実装前に必ず最新の条文と管轄の運輸支局でご確認ください。

点呼記録をシステム化するとき、最初に条文の記録項目を確定させる

結論から。記録項目は貨物自動車運送事業輸送安全規則の第7条第5項に書かれていて、そのままテーブルの列になります。

貨物自動車運送事業者は、第一項から第三項までの規定により点呼を行い、報告を求め、確認を行い、及び指示をしたときは、運転者等ごとに点呼を行った旨、報告、確認及び指示の内容並びに次に掲げる事項を記録し、かつ、その記録を一年間保存しなければならない。 一 点呼を行った者及び点呼を受けた運転者等の氏名 二 点呼を受けた運転者等が従事する運行の業務に係る事業用自動車の自動車登録番号又は車両番号その他の当該事業用自動車を識別できる表示 三 点呼の日時 四 点呼の方法 五 その他必要な事項

——貨物自動車運送事業輸送安全規則 第七条第五項(e-Gov法令検索、2026年8月20日閲覧)

これを設計に落とすと、こうなります。

条文の記録事項データとして持つもの設計上の注意
点呼を行った旨点呼レコードの存在そのもの「実施しなかった」も区別できるようにする
報告・確認・指示の内容確認項目ごとの結果+指示のテキスト自由記述だけにしない(後述)
点呼者・運転者等の氏名運行管理者ID/運転者ID氏名の文字列ではなくIDで持ち、氏名は履歴として残す
車両の登録番号等車両ID+その時点の登録番号車両を入れ替えても過去の記録が変わらないようにする
点呼の日時日時入力日時ではなく点呼を行った日時
点呼の方法対面/その他の方法(選択式)遠隔化を見据えて最初から選択式にする

この表を先に埋めてから画面を考える。順番を逆にすると、だいたいどこかが抜けます。

とくに落とし穴が「報告・確認及び指示の内容」です。ここは1つの自由記述欄にまとめたくなるところですが、そうすると後から「疲労の確認をしたか」を集計しようとしたときに何も出せません。確認項目は項目ごとに持つべきです。

乗務前・乗務後・中間で、確認する内容が違う

同じ「点呼」でも、法令が求める中身は場面で変わります。ここを1画面で使い回すと事故ります。

乗務前(第1項)で報告を求め確認するのは、次の各号です。

  • 運転者に対しては、酒気帯びの有無
  • 運転者に対しては、疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全な運転をすることができないおそれの有無
  • 道路運送車両法第47条の2第1項・第2項の規定による点検の実施又はその確認(日常点検)
  • 特定自動運行保安員に対しては、自動運行装置の設定の状況に関する確認

乗務後(第2項)は内容が変わります。当該業務に係る事業用自動車・道路・運行の状況について報告を求め、運転者に対しては酒気帯びの有無を確認する。そして見落とされやすいのがこの部分です。

この場合において、当該運転者等が他の運転者等と交替した場合にあっては、当該運転者等が交替した運転者等に対して行った第三条の二第四項第四号又は第十七条第四号の規定による通告についても報告を求めなければならない。

交替時の通告の報告は、乗務後にしか出てきません。乗務前の画面をコピーして乗務後を作ると、まず間違いなくこれが抜けます。

中間点呼(第3項)は、乗務前・乗務後のいずれも対面(または国土交通大臣が定める方法)で行えない業務のときに、途中で少なくとも1回。確認するのは第1項の一号と二号、つまり酒気帯びの有無と、安全な運転をすることができないおそれの有無の2つです。

種別確認する主な内容
乗務前酒気帯び/疾病・疲労・睡眠不足等/日常点検の実施・確認
中間酒気帯び/疾病・疲労・睡眠不足等(2項目)
乗務後車両・道路・運行の状況の報告/酒気帯び/交替時の通告の報告

私が設計するなら、点呼の種別を持ったうえで、種別ごとに必須項目が変わる構造にします。共通テーブル1つに全項目をぶら下げて「使うときだけ入力」にすると、未入力なのか該当なしなのかが後から判別できなくなります。

アルコール検知器の「営業所ごと」が設計に効く

第4項がなかなか厳しいことを書いています。

貨物自動車運送事業者は、アルコール検知器(呼気に含まれるアルコールを検知する機器であって、国土交通大臣が告示で定めるものをいう。以下同じ。)を営業所ごとに備え、常時有効に保持するとともに、前三項の規定により酒気帯びの有無について確認を行う場合には、運転者の状態を目視等で確認するほか、当該運転者の属する営業所に備えられたアルコール検知器を用いて行わなければならない。

読むべき点が3つあります。①営業所ごとに備える ②常時有効に保持する ③目視等の確認と検知器の両方。しかも使うのは「当該運転者の属する営業所に備えられた」検知器です。

これを踏まえると、システム側でやっておく価値があるのは次の2つです。

  1. どの検知器を使ったかを記録に紐づける(機器ID)。「営業所ごとに備えられたものを使った」ことが後から示せます
  2. 検知器の管理台帳を持つ。「常時有効に保持」を満たすには、故障や校正の状況が分かる必要があります

法令が機器IDの記録まで明示的に求めているわけではありません。ただ、監査で「どの機器で測ったのか」を聞かれたときに即答できる会社と、できない会社の差は大きい。追加コストがほぼゼロなので、私は入れておくことを勧めています。

遠隔点呼を視野に入れるなら、点呼の方法は最初から選択式にする

条文には繰り返し「対面により、又は対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法」という言い回しが出てきます。遠隔点呼やIT点呼は、この枠組みの中の話です。

この「国土交通大臣が定める方法」の中身は告示で定められており、告示は複数回改正されています。正直に書くと、私が調べた範囲では解説記事ごとに施行日や手続きの説明が食い違っていて、二次情報だけでは確定できませんでした。要件と手続きは、必ず最新の告示と管轄の運輸支局でご確認ください。ここを解説記事の記述だけで設計に落とすのは危険です。

要件として一般に挙げられるのは、運行管理者が運転者の全身を随時明瞭に確認できること、通信が途切れない環境、対話が妨げられない静かな通話環境など。いずれも機器とネットワークの要件なので、システムを作る側にとっては後から足しにくい部分です。

システムを作る側の実務的な結論はシンプルです。いま対面しかやっていなくても、「点呼の方法」は最初から選択式で持つ。あとから列を足すのは簡単でも、過去データの方法が空欄のまま残ると、監査で説明しづらくなります。

買うか、作るか

判断はここで分かれます。

  • 点呼だけを電子化したい → 既製品。点呼記録に特化した製品が複数あり、法定項目は当然押さえてあります。わざわざ作る理由がない
  • 配車・日報・請求と繋げたい → 作る(または連携部分を開発する)。点呼で入れた運転者・車両・日時を、日報や請求で二重入力しているなら、そこが効きます
  • 複数営業所で運用ルールが違う → 要検討。既製品の運用に寄せられるなら既製品、寄せられない事情があるなら開発

「点呼だけなら買う」は、私はけっこうはっきり言うほうです。法定項目が決まっている領域は、製品側がすでに作り込んでいます。差がつくのは点呼そのものではなく、点呼のデータが他の業務に繋がっているかどうかです。同じ構図は産廃のマニフェストでも起きていて、電子マニフェストを自社システムと連携する(JWNETのEDI方式)に整理しました。作るか買うかの一般的な損益分岐はスクラッチ・パッケージ・SaaSの損益分岐点、機能ごとの費用感は業務システムの費用を機能別に分解するにあります。

「一年間保存」を1年で消してよい、と読まないこと

最後に運用の話を1つ。条文は「その記録を一年間保存しなければならない」です。これは下限であって、1年で消すことを求めているわけではありません。

システムで自動削除を組むと、事故対応や監査で過去に遡りたいときに何も出せなくなります。点呼記録はテキストと数値が中心でデータ量も知れているので、消す設計にするメリットがほとんどない。私なら削除機能そのものを作らず、必要になったときに個別対応にします。

いま確認すべき3点

  1. 記録項目の表を埋めたか(第7条第5項の5項目+報告・確認・指示の内容)
  2. 乗務前・乗務後・中間で必須項目を分けたか(とくに乗務後の交替時の通告)
  3. 点呼のデータを他の業務に流すのか、点呼で完結させるのか(ここで買うか作るかが決まる)

3つ目が曖昧なまま見積もりを取ると、各社の提案がバラバラになって比較できません。自社の営業所数・車両台数・既存システムを前提にどれくらいかかるかを知りたい場合は、作りたいものを入力するとAIが約3分で概算を出すAI見積もりをお試しください。「点呼だけなら買ったほうがいいのでは」という結論になっても構いません。その判断こそ、発注前にはっきりさせておく価値があります。

なお法令・制度は改正されます。実装前には必ず最新の条文と、管轄の運輸支局の指導をご確認ください。


出典(2026年8月20日閲覧。法令・制度は改正される場合があります)

よくある質問

点呼記録に必ず残さなければならない項目は何ですか?
貨物自動車運送事業輸送安全規則第7条第5項により、点呼を行った旨、報告・確認・指示の内容に加えて、①点呼を行った者および点呼を受けた運転者等の氏名 ②点呼を受けた運転者等が従事する運行の業務に係る事業用自動車の自動車登録番号または車両番号その他の識別できる表示 ③点呼の日時 ④点呼の方法 ⑤その他必要な事項、を記録することとされています。
点呼記録は何年保存する必要がありますか?
1年間です。条文は「その記録を一年間保存しなければならない」としています。ただし監査や事故対応で過去の記録を求められることを考えると、システム側で1年で自動削除する設計は勧めません。保存期間の下限が1年である、と読むのが実務的です。
乗務前と乗務後で点呼の内容は違いますか?
違います。乗務前は酒気帯びの有無、疾病・疲労・睡眠不足その他により安全な運転をすることができないおそれの有無、日常点検の実施またはその確認などを確認します。乗務後は事業用自動車・道路・運行の状況の報告と酒気帯びの有無の確認で、運転者が交替した場合は交替時の通告についても報告を求めることとされています。
アルコール検知器はどのように備える必要がありますか?
条文は「アルコール検知器を営業所ごとに備え、常時有効に保持する」ことを求めています。酒気帯びの確認は運転者の状態を目視等で確認するほか、当該運転者の属する営業所に備えられたアルコール検知器を用いて行うこととされています。
点呼記録システムは買うべきですか、作るべきですか?
点呼だけを電子化したいなら既製品が速くて安く済みます。配車・日報・請求といった既存システムに点呼のデータを繋いで二重入力をなくしたい場合や、複数営業所で運用ルールが異なる場合は、作る(または連携部分を開発する)検討に入る価値があります。

自社の場合、いくら?

運送業の業務は例外処理が多く、要件が固まりきる前ほど見積もりがぶれます。作りたいものを入力すると、AIが約3分で概算を出します。無料で、営業からのしつこい連絡はありません。「そもそも作る価値があるか」の段階でも構いません。

AIで概算見積もり(無料) →

先に費用の目安を知りたい方は用途別の費用相場へ。

あわせて読みたい

← ブログ一覧へ戻る