リスキリング助成金の経過措置は5つ、旧ルールが延びるのは2つだけ
2026年8月3日改正の経過措置は「旧要領がまるごと生きる/死ぬ」の二択ではありません。支給要領1402には5つの例外が並んでいて、条件も確認方法も別々です。支給要領(令和8年8月3日版)の条文から、自社がどれに当たるかを整理しました。

この記事でわかること
- 経過措置の原則は「計画届の提出日が2026年8月3日より前なら従前の支給要領」。ただし支給要領1402にはイ〜ホの5つの例外があり、それぞれ条件が違う
- 様式第28号だけは計画届の提出日を問わず適用される(=経過措置の外)
- 8月2日以前に契約・申込・発注をしていれば、8月3日以降の計画届でも旧要領で見てもらえる余地がある。ただし日付が分かる書類を計画届の提出時に出すことが条件
- 事業外訓練で8月2日以前に契約・申込していれば、eラーニングの「年1回」にカウントされない。知らないと1回分を無駄にする
2026年8月3日に、人材開発支援助成金の事業展開等リスキリング支援コースの支給要領が改正されました。中身(対象訓練の厳格化とeラーニングの年1回制限)は前回の記事に書いたとおりです。
そのとき私は「経過措置があるので進行中の案件は労働局に確認を」で止めました。そこを開けます。 支給要領(令和8年8月3日版)の1402を読むと、経過措置は「旧要領がまるごと生きる/死ぬ」の二択ではなく、5つに分かれています。
事業展開等リスキリング支援コースの経過措置は5つに分かれている
まず適用期日と原則です。
1401 適用期日 本支給要領は、「職業訓練実施計画届」(様式第1-1号)の提出日が令和8年8月3日以降であるものについて適用する。
1402 経過措置 本支給要領改正前の「職業訓練実施計画届」(様式第1-1号)の提出日が、この要領の適用期日前であるものについては、従前の支給要領を適用することとする。ただし、次のイからホの場合は、この限りではない。
判定の基準日は計画届の提出日であって、訓練の開始日でも支給申請日でもありません。そのうえで、例外が5つ。
| 何についての例外か | 効き方 | |
|---|---|---|
| イ | 様式第28号(受講料等の価格設定に関する疎明書) | 計画届の提出日を問わず必要。経過措置の外 |
| ロ | 0305(支給の対象としない訓練等の例) | 8月3日以降の計画届でも、契約が8月2日以前なら旧要領 |
| ハ | eラーニングの受講回数制限 | ロ(イ)に当たれば回数に算入しない |
| ニ | 様式第8-3号(eラーニング訓練実施結果報告書) | 令和7年4月1日以降の計画届は新様式を使う |
| ホ | 公表に関する特例 | 8月3日以降の支給申請から適用 |
方向がそろっていない点に注意してください。イとニは事業主に不利な方向(新ルールが前倒しで効く)、ロとハは有利な方向(旧ルールが延びる)です。ひとまとめに「経過措置がある」と覚えると、両方向で間違えます。
ロとハ:8月2日以前の契約書が残っていれば、まだ旧要領で見てもらえる
実務でいちばん効くのがここです。条文はこうなっています。
(ロ)事業内訓練の場合 0501 イに掲げる経費に係る契約、申込、発注その他これらに準ずる行為(以下「契約等の行為」)のうち、当該訓練の実施に関連するものであるいずれか一つ以上が令和8年8月2日以前に行われている場合 ※0501 イに掲げる経費に係る契約書、申込書又は発注書等を計画届提出時に提出し、これをもって上記の確認を行う。 ※「契約書、申込書又は発注書等」とは、相手方の名称、所在地、連絡先、役務提供の内容、契約等の行為が行われた日が分かるもの。
事業外訓練(外部の研修会社に頼む形)なら「教育訓練機関との契約の締結又は申込が令和8年8月2日以前」です。事業内訓練(自社で組む形)なら、経費に関わる契約・申込・発注のいずれか1つ以上が8月2日以前。1つでいいというのは、思ったより広く拾える書き方だと思います。
そして、こちらが見落とされやすい。
ハ 0510 ヘ(ロ)のeラーニングの受講回数の制限については、令和8年8月3日以降に提出された「職業訓練実施計画届」(様式第1-1号)に基づく訓練等であっても、ロ(イ)に該当する場合には、0510 ヘ(ロ)の受講回数に算入しないこととする。
事業外訓練で8月2日以前に契約・申込していれば、その訓練はeラーニングの「同一労働者・年度1回」の枠を消費しません。 年度の残り枠が1回増えるということです。ここを知らずに「もう今年度は使い切った」と判断すると、単純に1回分を捨てます。
なお、ハが参照しているのはロ(イ)=事業外訓練だけです。事業内訓練(ロ(ロ))は回数の非算入には出てきません。ここは条文どおりに読むべきところで、私も最初は両方に効くと読み違えました。
今から揃えられるもの
契約日が8月2日以前の案件を抱えているなら、計画届の提出時に出す書類を先に作れます。上の定義をそのままチェックリストにするとこうなります。
- 相手方の名称
- 相手方の所在地
- 相手方の連絡先
- 役務提供の内容(何の訓練か)
- 契約等の行為が行われた日
メール1本で発注したような案件だと、所在地と連絡先が抜けます。先方に発注請書か申込書控えを出してもらうのがいちばん早いです。日付だけ合っていても、他の項目が欠けていると確認に使えません。
定額制サービス(サブスク型のeラーニング)には別の但し書きがあります。契約期間が1年を超える場合は、契約締結日または申込日が8月2日以前で、かつ契約期間の初日から1年以内の実施期間に係る計画届であることが条件です。長期契約を根拠に何年も旧要領で通す、という形にはなっていません。
ニ:様式第8-3号は「申請画面から落としたもの」では駄目
ニ 令和7年4月1日以降に提出された「職業訓練実施計画届」(様式第1-1号)の場合、0804 に定める書類のうち、eラーニング訓練実施結果報告書(様式第8-3号)については、本支給要領の様式を適用するものとする。
要領がこう定めている結果、厚生労働省のページには実務上の注意書きが出ています。
○令和7年4月1日以降に計画届を提出し、令和8年8月3日以降に支給申請を行う場合、様式第8-3号(eラーニング訓練実施結果報告書)は、申請画面からダウンロードしたものではなく、以下からダウンロードしたものを添付してください。
電子申請の画面が、まだ古い様式を配っているということです。画面の指示どおりに操作した人が落ちる形なので、eラーニングでAI研修をやった会社は支給申請の直前に必ず確認してください。同じページには、様式第28号についても「改正に対応した電子申請画面は準備中」とあり、計画届・支給申請画面の「3.その他管轄労働局長が必要と認める書類について」の欄に添付するよう案内されています。様式第28号そのものの書き方は別の記事に整理しました。
ついでに:経費助成の限度額(令和8年8月3日版)
経過措置の判定と一緒に聞かれることが多いので、同じ支給要領から拾っておきます。通学制または同時双方向型の通信訓練の場合、1人につき一の職業訓練実施計画あたりの経費助成の限度額です。
| 企業規模 | 10時間以上100時間未満 | 100時間以上200時間未満 | 200時間以上 |
|---|---|---|---|
| 中小企業 | 30万円 | 40万円 | 50万円 |
| 大企業 | 20万円 | 25万円 | 30万円 |
- eラーニング・通信制は時間数に関係なく、中小企業15万円・大企業10万円(通学制と組み合わせる場合を含む)
- 専門実践教育訓練の指定講座は中小企業50万円・大企業30万円
- 定額制サービスは1人あたり1か月2万円
- 一の事業所・一の年度の支給額の合計は1億円が限度
eラーニングの上限が15万円で、しかも年1回。eラーニングが助成対象になるかの記事にも書きましたが、eラーニングだけで組むと金額が伸びない設計になっています。
自社がどれに当たるか
3つの日付を並べれば判定できます。
- 計画届の提出日 — 8月3日より前か以降か(原則の分岐)
- 契約・申込・発注の日 — 8月2日以前のものがあるか(ロとハの分岐)
- 支給申請の日 — 8月3日以降か(ホと、様式の分岐)
そのうえで、様式第28号(イ)だけは日付に関係なく必要、と覚えるのが早いです。判定に迷う組み合わせは条文が細かいので、最終的には管轄の労働局に当ててください。この記事は「何を聞けばいいか」を作るためのものです。「経過措置は使えますか」と聞くより、「事業内訓練で発注書の日付が7月28日なんですが、1402ロ(ロ)に当たりますか」と聞いたほうが、話が一往復で済みます。
当社のAI研修は、計画届の提出時期と契約日を先に確認したうえでカリキュラムを組んでいます。助成金は審査があるので受給を保証するものではありませんが、日付の順番だけは後から直せないので、そこは最初に見ています。
どの経過措置に当たるかを詰める前に、研修の中身を決めておく
経過措置の判定は契約日と計画届の日付で決まるので、先に「いつ・誰に・何を」を決めないと、そもそもどの列を見ればいいかが定まりません。
自社のどこから手を付けるかはAI適合度診断の10問で点数が出ます。連絡先の入力は要りません。 費用の当たりを付けたい段階なら、AI見積もりが研修費用と助成金活用時の実質負担まで約3分で試算します。
出典
- 厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)支給要領(令和8年8月3日版)」(2026年8月26日閲覧。1401・1402・0510)
- 厚生労働省「人材開発支援助成金」(2026年8月26日閲覧。電子申請を利用する際の留意事項)
- 厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)改正:令和8年8月3日からの変更点について」(2026年8月26日閲覧)
制度は改正されます。申請の前に必ず最新の支給要領と管轄労働局の案内をご確認ください。
よくある質問
- 経過措置の原則はどうなっていますか?
- 支給要領1402では、改正前の「職業訓練実施計画届」(様式第1-1号)の提出日が適用期日(令和8年8月3日)より前のものについては従前の支給要領を適用する、とされています。ただしイからホの5つの場合はこの限りではない、と続きます。
- 計画届を8月3日以降に出したら、もう旧要領は使えませんか?
- そうとは限りません。支給要領1402ロでは、対象としない訓練等の例(0305)について、事業外訓練なら教育訓練機関との契約締結または申込が令和8年8月2日以前、事業内訓練なら経費に係る契約・申込・発注等のいずれか1つ以上が令和8年8月2日以前に行われている場合は、改正前の要領を適用するとされています。
- 何を出せば8月2日以前だと認めてもらえますか?
- 支給要領には「契約書、申込書又は発注書等」とは、相手方の名称、所在地、連絡先、役務提供の内容、契約等の行為が行われた日が分かるもの、と定義されています。事業内訓練の場合はこれを計画届の提出時に提出して確認を受ける形です。
- eラーニングの年1回制限にも経過措置はありますか?
- あります。支給要領1402ハでは、令和8年8月3日以降に提出された計画届に基づく訓練であっても、ロ(イ)に該当する場合(事業外訓練で契約締結または申込が令和8年8月2日以前)は、受講回数に算入しないとされています。
- 様式第8-3号は申請画面から取ればいいですか?
- 厚生労働省は、令和7年4月1日以降に計画届を提出し令和8年8月3日以降に支給申請を行う場合、様式第8-3号(eラーニング訓練実施結果報告書)は申請画面からダウンロードしたものではなく、同省ページに掲載された令和8年8月3日改正様式を使うよう案内しています。支給要領1402ニが根拠です。
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