【要注意】システム開発の外注、下請法は「発注する中小企業」も縛ります
2026年1月に下請法が中小受託取引適正化法(取適法)へ変わりました。条文の「情報成果物」にはプログラムが名指しで入っていて、システム開発の外注はこの法律の射程に入ります。ただし自社利用のシステムは原則として対象外です。資本金と従業員の判定表、支払期日60日の数え方、発注書に書く明示事項を条文から整理しました。

この記事でわかること
- 条文の「情報成果物」にプログラムが名指しで入っている(第2条第7項第1号)。システム開発の外注は、条件を満たせばこの法律の対象
- ただし自社で使うシステムを外注するだけなら原則として対象外。第2条第3項が「その使用する情報成果物の作成を業として行う場合」に限定しているため。ここを飛ばして「プログラムだから対象」と書いている解説が多い
- 判定は資本金と従業員の2本立て。情報成果物作成委託は資本金5,000万円超→5,000万円以下、または1,000万円超5,000万円以下→1,000万円以下。加えて従業員100人超→100人以下という基準がある
- 支払期日は受領日から60日以内。条文は「検査をするかどうかを問わず」と書いているので、検収に時間をかけても時計は受領日から動く。60日を超えて定めると、受領日から60日を経過した日の前日が支払期日とみなされる
システム開発を外注するとき、多くの会社が「下請法は大企業の話」だと思っています。私もこの理解でいる会社が多いだろうと考えていました。
条文を読むと違いました。発注する側が中小企業でも、相手との組み合わせ次第で規制される側になります。 しかも2026年1月1日に法律が変わり、従業員数だけで該当する基準が加わっています。
先に断っておくと、自社で使うシステムを外注するだけなら、原則としてこの法律の対象外です。ここを飛ばしている解説が多いので、そこから整理します。
システム開発の外注が下請法(取適法)の対象になるかは、委託の型と規模で決まる
2026年1月1日から、下請法は中小受託取引適正化法(取適法)になりました。「親事業者」は委託事業者、「下請事業者」は中小受託事業者という呼び方に変わっています。
まず、システム開発がこの法律の射程に入る理由から。
7 この法律で「情報成果物」とは、次に掲げるものをいう。 一 プログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。)
——製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律 第2条第7項(e-Gov法令検索・2026年8月31日閲覧。強調は筆者)
プログラムが名指しで入っています。 だから「システム開発は関係ない」とはなりません。
ただし、自社で使うシステムの外注は原則として対象外
ここがいちばん誤解されているところです。プログラムが情報成果物だからといって、プログラムの外注がすべて「情報成果物作成委託」になるわけではありません。
3 この法律で「情報成果物作成委託」とは、事業者が業として行う提供若しくは業として請け負う作成の目的たる情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用する情報成果物の作成を業として行う場合にその情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託することをいう。
——同法 第2条第3項(2026年8月31日閲覧。強調は筆者)
3つの型に分かれています。
| 型 | 具体例 | 情報成果物作成委託か |
|---|---|---|
| 業として行う提供の目的物 | ソフトウェア会社が自社製品の開発を外注する | 該当する |
| 業として請け負う作成の目的物 | 受託開発会社が案件の一部を再委託する | 該当する |
| 自社で使うもの | 製造業が自社の在庫管理システムを外注する | 原則として該当しない |
3行目の但し書きが「その使用する情報成果物の作成を業として行う場合」です。自社利用のシステムを作らせるだけで、その作成を業として行っていないなら、この定義に入りません。
つまり、社内システムを外注する多くの中小企業は、そもそもこの法律の対象になりません。 一方で、自社サービスの一部を外注するソフトウェア会社や、受注した開発を再委託する会社は、規模の条件を満たせば委託事業者になります。
「プログラムだから対象」で止めると、逆に関係ない会社に不要な作業をさせることになります。ここは分けて考えてください。
資本金と従業員、2つの入口がある
型に当てはまったら、次は規模です。情報成果物作成委託では、条文が資本金の基準を2つ、従業員の基準を1つ置いています。
| 号 | 発注する側(委託事業者) | 受ける側(中小受託事業者) |
|---|---|---|
| 第2条第8項第3号 | 資本金5,000万円超 | 個人または資本金5,000万円以下 |
| 同 第4号 | 資本金1,000万円超5,000万円以下 | 個人または資本金1,000万円以下 |
| 同 第6号 | 常時使用する従業員100人超 | 従業員100人以下の個人または法人 |
第6号が効きます。 資本金1,000万円のままで人を増やしてきた会社は、資本金の基準では引っかからなくても、従業員が100人を超えた時点で委託事業者になり得ます。 条文は第3号・第4号に該当する場合を除くと書いているので、資本金基準と二重には当たりませんが、入口が2つあることは押さえてください。
自社の資本金と従業員数、それから発注先の資本金・従業員数。この4つを並べるだけで判定できます。 発注先がフリーランス(個人)なら、資本金の側は自動的に「個人」の欄に入ります。個人へ発注するときの別の義務はAI開発の外注先の選び方にまとめたフリーランス新法の節を見てください。
支払期日の60日は、検収を待ってくれない
該当した場合、いちばん実務に効くのが支払期日です。
第三条 製造委託等代金の支払期日は、委託事業者が中小受託事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、委託事業者が中小受託事業者の給付を受領した日から起算して、六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。
——同法 第3条第1項(2026年8月31日閲覧。強調は筆者)
「検査をするかどうかを問わず」の一句が本題です。システム開発だと、納品してから検収に2週間、社内稟議に2週間、締め日の関係でさらに1か月、というのはよくある組み方です。その全部が60日の中に入ります。
しかも定め方を間違えたときの扱いが第2項に書いてあります。
- 支払期日を定めなかったとき → 受領日が支払期日とみなされる
- 60日を超えて定めたとき → 受領日から60日を経過した日の前日が支払期日とみなされる
つまり「支払いは検収後、翌々月末」という契約は、条件を満たす取引なら書いた瞬間に無効化されて60日側に寄せられます。 発注側にとっては、契約書の文言より条文が先に立つということです。
システム開発の見積もりと支払条件の関係は見積書の「一式」の読み方にも書きました。
発注書に書く項目は条文が指定している
第四条 委託事業者は、中小受託事業者に対し製造委託等をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、中小受託事業者の給付の内容、製造委託等代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を、書面又は電磁的方法により中小受託事業者に対し明示しなければならない。
——同法 第4条第1項(2026年8月31日閲覧。強調は筆者)
「直ちに」です。契約書の締結を待つのではなく、委託した時点で明示が要ります。内容が定まらないことに正当な理由がある事項は後回しにできますが、定まり次第「直ちに」明示する義務が残ります。
システム開発では「給付の内容」がいちばん書きにくいところだと思います。要件が固まりきる前に着手することがあるからです。ただ、それは後から明示できる事項の話であって、明示しなくてよい話ではありません。要件が確定した日に発注書を追いかけて出す運用を、最初に決めておくのが現実的です。
禁止されている行為(第5条第1項)
条文が名指ししている行為を、システム開発の場面に置き換えます。
| 号 | 条文の行為 | 開発の現場だとこうなる |
|---|---|---|
| 一 | 受領を拒む | 完成したものを「今は要らない」と受け取らない |
| 二 | 支払期日を過ぎても支払わない(手形の交付、期日までに金銭と引き換えることが困難な支払手段の使用を含む) | 手形払い・期日までに現金化できない決済 |
| 三 | 責めに帰すべき理由がないのに代金を減額する | 検収後の「予算が減ったので」の値引き |
| 五 | 通常支払われる対価に比し著しく低い代金を不当に定める | 相場から外れた買いたたき |
| 六 | 自己の指定する物や役務を強制して購入・利用させる | 指定ツールの購入強制 |
| 七 | 公正取引委員会等へ知らせたことを理由に不利益な取扱いをする | 通報を理由にした取引停止 |
二号の括弧書きが手形払い禁止の条文上の姿です。「手形を交付すること」が、支払期日を過ぎても支払わない行為に含まれると書かれています。
発注前に決める4項目
条文から逆算すると、システム開発を外注する前に決まっていればよいのは4つです。
- 自社と発注先の資本金・従業員数を並べる(該当しないなら、以下は不要)
- 委託の型を確認する——自社利用のシステムなら原則として対象外
- 支払期日を受領日から60日以内で設計する(検収期間・締め日・支払サイトを合計して60日に収まるか)
- 要件が確定した日に発注書を出す運用を決める(第4条の「直ちに」に対応する)
1と2で「対象外」と分かる会社が多いはずです。 その場合は何もしなくてよい。逆に該当するなら、3が契約書の書き換えを伴いますので、先に見ておく価値があります。
当社への発注でいくらかかるかはAI見積もりで概算が出ます。受託開発の進め方はAI受託開発に置いています。
なお、個別の取引が該当するかどうかは事実関係で変わります。判断に迷う場合は公正取引委員会または弁護士に確認してください。 この記事は条文の読み方を発注実務に翻訳したもので、法律相談ではありません。
発注の条件を詰める前に、金額の当たりを付けておく
ここまでは「どう頼むか」の話でした。ただ実務では、先に金額の幅が見えていないと、支払期日も検収の日程も決めようがありません。 順番としては金額が先です。
AI見積もりに作りたいものを書くと、約3分で概算が出ます。一般的なSIerの相場と当社の金額が並ぶので、手元の見積書が高いのか妥当なのかを測る物差しとして使えます。無料で、しつこい営業の連絡もしていません。
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出典
- 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(昭和31年法律第120号)(e-Gov法令検索、2026年8月31日閲覧。2026年1月1日施行の改正後の条文)
よくある質問
- システム開発の外注は下請法(取適法)の対象になりますか?
- 条件を満たせば対象です。中小受託取引適正化法第2条第7項第1号は「情報成果物」に「プログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたもの)」を挙げています。ただし対象になるかは、委託の型と、発注側・受注側それぞれの資本金または従業員数で決まります。
- 自社で使うシステムを外注する場合も対象ですか?
- 原則として対象外です。第2条第3項は情報成果物作成委託を「事業者が業として行う提供若しくは業として請け負う作成の目的たる情報成果物の作成」の委託と、「事業者がその使用する情報成果物の作成を業として行う場合」の委託に限定しています。自社利用のシステムを作らせるだけで、その作成を業として行っていないなら、この定義に入りません。個別の判断は公正取引委員会や弁護士に確認してください。
- 資本金がいくらだと発注側が規制されますか?
- 情報成果物作成委託の場合、第2条第8項第3号が資本金5,000万円超の法人が個人または資本金5,000万円以下の法人へ委託する場合、第4号が資本金1,000万円超5,000万円以下の法人が個人または資本金1,000万円以下の法人へ委託する場合を挙げています。さらに第6号に、常時使用する従業員100人超の法人が従業員100人以下の相手へ委託する場合という基準があります。
- 支払期日はいつまでにすればよいですか?
- 第3条は「給付を受領した日から起算して、六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない」としています。同条は「検査をするかどうかを問わず」と明記しているため、検収に時間をかけても起算日は受領日のままです。期日を定めなかった場合は受領日が、60日を超えて定めた場合は受領日から60日を経過した日の前日が、支払期日とみなされます。
- 発注書には何を書けばよいですか?
- 第4条第1項は、製造委託等をした場合は直ちに、給付の内容・代金の額・支払期日及び支払方法その他の事項を、書面または電磁的方法で明示することを求めています。内容が定められないことに正当な理由がある事項は後から明示できますが、定まり次第「直ちに」明示する必要があります。具体的な記載事項は公正取引委員会規則で定められています。
自社の場合、いくら?
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