【要注意】AI開発をフリーランスに外注、発注側に法律の義務が生じます
発注先の形態は大きく4つで、費用も体制も責任の重さも違います。それぞれが合う人を事実で整理したうえで、フリーランスに頼むと発注側にどんな法的義務が生じるかを条文で確認します。当社が合うのはどういう人かも正面から書きました。

この記事でわかること
- 発注先は「大手SIer/中堅・中小の開発会社/フリーランス/小規模専門」の4形態。中堅・中小SIerの人月は60〜100万円が目安で、形態が変われば同じ要件でも金額は数倍動く
- フリーランスに頼むと、発注側に法律上の義務が生じる。取引条件の書面明示、受領から60日以内の支払期日、継続委託なら30日前の解除予告。従業員のいない一人法人も対象になる
- 罰則もある。命令違反や検査拒否は50万円以下の罰金で、法人にも科される両罰規定つき
- 選ぶ順番は「金額」ではなく「①誰が手を動かすか ②窓口は何人挟むか ③引き継げる形で納品されるか」の3問
「AI開発をどこに頼めばいいか」という問いに、金額から入ると高い確率で迷子になります。同じ要件でも、頼む相手の形態が変われば金額は数倍動くからです。先に形態を決めて、そのうえで金額を見るほうが早い。
この記事では発注先を4つの形態に分け、それぞれが合う人を書きます。そしてフリーランスに頼むときに発注側へ生じる法的義務を条文で確認します。最後に、当社のような小規模専門が合うのはどういう人かも正面から書きます。中立を装うつもりはありません。
AI開発の外注先の選び方は、まず4つの形態から入る
| 形態 | 人月単価の目安 | 得意な規模 | 窓口 |
|---|---|---|---|
| 大手SIer | 中堅・中小より高い | 数千万円〜 | 営業→PM→PL→開発(多層) |
| 中堅・中小の開発会社 | 60〜100万円 | 数百万〜数千万円 | 営業+PM |
| フリーランス | 中堅・中小より低い | 〜数百万円 | 本人 |
| 小規模専門 | 会社により幅がある | 数十万〜数千万円 | 本人または少人数 |
※人月60〜100万円は、当社がAI見積もりの試算前提に置いている中堅・中小SIerの水準です。用途別の金額は用途別の費用相場にまとめています。
大手SIerが合うのは、基幹システムの刷新など失敗したときの損害が大きい案件、社内の調達規定で一定規模以上の会社しか選べない場合、そして「発注先が10年後も存在していること」自体が要件になる場合です。窓口が多層なのは無駄ではなく、担当が変わっても止まらないための仕組みです。
中堅・中小の開発会社が合うのは、要件がある程度固まっていて、数百万円規模で作り切りたい案件。日本のシステム開発の主戦場で、選択肢がいちばん多い層です。
フリーランスが合うのは、範囲がはっきりしていて短期で終わる仕事。ただし後述の法的義務と、継続性のリスクを引き受ける前提が要ります。
小規模専門が合うのは、要件がまだ固まっていない段階から相談したい場合と、大手や中堅に「その規模は受けられない」と言われた案件です。
フリーランスに頼むと、発注側に法律上の義務が生じる
ここが「選び方」記事であまり書かれていないところです。いわゆるフリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律・令和5年法律第25号)は、発注する側に義務を課します。公布は令和5年5月12日、施行は2024年11月1日です(施行日を定めたのは令和6年政令第200号)。すでに動いています。
まず対象の定義から。
この法律において「特定受託事業者」とは、業務委託の相手方である事業者であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。 一 個人であって、従業員を使用しないもの 二 法人であって、一の代表者以外に他の役員(略)がなく、かつ、従業員を使用しないもの
——特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律 第2条第1項(e-Gov法令検索・2026年8月27日閲覧)
法人格の有無では決まりません。 役員が代表1人だけで従業員がいない会社は、法人でも対象です。「相手が法人だから関係ない」は成り立ちません。
そしてシステム開発が対象に入ることも、条文に明記されています。
三 事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造(加工を含む。)又は情報成果物の作成を委託すること。 (略) 四 前項第一号の「情報成果物」とは、次に掲げるものをいう。 一 プログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。)
発注側に生じる義務を整理すると、こうなります。
| 条文 | 発注側がやること |
|---|---|
| 第3条 | 委託したら直ちに、給付の内容・報酬の額・支払期日などを書面か電磁的方法で明示する |
| 第4条 | 支払期日は受領日から60日以内、かつできる限り短い期間内。検査の有無を問わない |
| 第4条2項 | 期日を定めなかったら受領日が支払期日とみなされる |
| 第5条 | 継続的な委託では、受領拒否・報酬減額・返品・買いたたき・購入強制が禁止 |
| 第16条 | 継続的委託の解除・不更新は30日前までに予告。理由の開示請求にも応じる |
第4条の書き方は特に注意が要ります。「検査をするかどうかを問わず」60日以内、と条文に明記されています。「検収が終わってから支払サイト60日」という設計は、受領から起算するとオーバーします。
罰則もあります。命令違反や報告拒否は50万円以下の罰金(第24条)で、しかも第25条の両罰規定により、行為者だけでなく法人にも科されます。
発注前に決めておくこと
条文から逆算すると、フリーランスに頼む場合は契約の前にここを決めておけば足ります。
- 給付の内容(何をどこまで作ってもらうか)を文章にする
- 報酬の額と支払期日を受領日から60日以内に設定する
- 発注時に上記を書面かメールで送る(口頭のみは不可)
- その委託が継続的になるか(政令で定める期間以上)を先に判定する
- 継続なら、終了予定日の30日前に連絡できる社内フローを作る
これは相手を守るためだけの手続きではありません。支払サイトと成果物の範囲を先に書面化するのは、発注側にとっても揉めない条件です。見積書の読み方で書いた「前提条件と除外事項」と同じ話が、法律の側からも要求されている形になります。
当社が合うのは、こういう人です
正直に書きます。当社は小規模専門の側です。合うのは次のような方だと思っています。
- 要件が固まっていない段階から相談したい。 「そもそも作る価値があるか」から一緒に決めたい場合
- 窓口を挟みたくない。 代表がエンジニアとして直接開発するので、営業とエンジニアで話が食い違いません
- 小さく始めたい。 下限は約30万円からで、大手や中堅に断られる規模も受けています
- 先に金額の当たりをつけたい。 AI見積もりを無料で公開していて、作りたいものを入力すると約3分で概算が出ます
逆に合わないのは、調達規定で一定規模以上の会社しか選べない場合、24時間365日の有人監視が要件になる場合、そして発注先の組織規模そのものがリスク評価の対象になる場合です。こういう案件は大手SIerや中堅の開発会社のほうが確実です。そこを無理に取りにいくと、双方が損をします。
判断の順番は、金額ではなく3つの問い
最後に、形態を絞ったあとの見方です。
- 誰が手を動かすか。 提案してくれた人と実装する人が同じか、別か。別なら間に何人入るか
- 窓口を何人挟むか。 仕様変更の相談が実装者に届くまでの距離が、そのまま手戻りの量になります
- 引き継げる形で納品されるか。 ソースコード・変更履歴・設計ドキュメントが渡されるか。特定のベンダーでなければ触れない構成になっていないか
3番目は、どの形態を選んでも必ず確認してください。発注先を替えたくなったときに替えられるかどうかは、契約時にしか決められません。安さの理由の見分け方は「安い開発会社」で失敗する典型パターンに、作り方(スクラッチ/パッケージ/SaaS)の選択は5年TCOでの比較にまとめています。中小企業の目線で形態ごとに順位を付けた版はAI開発会社おすすめ5選|中小企業はここで選ぶにあります。
出典
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和5年法律第25号・令和5年5月12日公布/2024年11月1日施行)(e-Gov法令検索・2026年8月29日閲覧。第2条・第3条・第4条・第5条・第16条・第24条・第25条および附則)
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令(令和6年政令第200号)(e-Gov法令検索・2026年8月29日閲覧。施行日の根拠)
法令の適用は個別事情によります。契約の設計は顧問弁護士・社労士にご確認ください。人月単価の目安は当社の試算前提であり、実際の金額は要件と発注先によって変わります。
よくある質問
- AI開発の外注先はどう選べばいいですか?
- まず形態を4つに分けてください。大手SIer、中堅・中小の開発会社、フリーランス、小規模専門です。同じ要件でも形態によって費用は数倍変わります。そのうえで「誰が手を動かすか」「窓口を何人挟むか」「引き継げる形で納品されるか」の3点で絞るのが実務的です。
- フリーランスに頼むと発注側に義務が生じるのですか?
- はい。特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(いわゆるフリーランス新法)により、業務委託をした場合は直ちに給付の内容・報酬の額・支払期日などを書面か電磁的方法で明示する義務があります。支払期日も、給付を受領した日から60日以内かつできる限り短い期間内に定めなければなりません。
- 相手が法人ならフリーランス新法の対象外ですか?
- いいえ。同法第2条は「法人であって、一の代表者以外に他の役員がなく、かつ従業員を使用しないもの」も特定受託事業者に含めています。法人格の有無ではなく、役員と従業員の有無で決まります。
- システム開発の外注もフリーランス新法の対象ですか?
- 対象になり得ます。同法第2条第3項は「情報成果物の作成を委託すること」を業務委託に含め、第4項でその情報成果物に「プログラム」を明示しています。
- 人月単価の目安はいくらですか?
- 当社が見積もりの試算前提に置いている数字では、中堅・中小SIerで人月60〜100万円です。大手SIerはこれより高く、フリーランスはこれより低いのが一般的ですが、単価が低くても工数が増えれば総額は逆転します。単価と工数はセットで見てください。
自社の場合、いくら?
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