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ChatGPTで社内FAQを作る手順|食い違う回答は片方だけ残ります

架空の問い合わせ履歴24件に「回答が食い違う2件」「条件が違う2件」「1件しかない例外」を仕込んで、AIにFAQを作らせました。「この履歴からFAQを作って」だけで投げると、送料無料の金額は片方だけが残り、食い違っていたことは出力のどこにも残りませんでした。出力の列を先に決めて取り戻す手順と、人が確認する場所の判定表を、実行結果つきで書きました。

佐野 泰規佐野 泰規株式会社AIエージェント 代表取締役約8分で読めます
木の机に並べた白いカードを両手で並べ替えている手元
Pexels / Ron Lach

この記事でわかること

  • 架空の問い合わせ履歴24件に罠を5つ仕込んで実行した。「この履歴からFAQを作って」だけでは4つが崩れた
  • いちばん危ないのは「食い違い」。送料無料が5,000円と3,300円で食い違っていたのに、出力には片方だけが残り、食い違っていた事実はどこにも残らなかった
  • 原因は、まとめる作業では「揃える」が既定の動作だから。少数派と例外は、多数派の回答に吸収されて消える
  • 出力の列に「件数・根拠ID・条件・例外・要確認」を作ると、消えた4つが戻った。AIに考えさせるのではなく、置き場所をこちらが作る
  • 裁定は人がやる。どちらが現在の運用かは履歴からは決まらない。判定表にその線を引いた

架空の問い合わせ履歴24件に、実務でよく起きる罠を5つ仕込んでAIにFAQを作らせたところ、4つが崩れました。

いちばん危なかったのは送料無料の金額です。履歴の中で5,000円と3,300円に食い違っていたのに、出力には片方だけが残り、食い違っていたことはどこにも書かれませんでした。まとめる作業では「揃える」が既定の動作だからです。

以下はその回避まで含めた手順です(実行環境はClaudeですが、手順はツールに依存しません)。

ChatGPTで社内FAQを作る手順は3つに分かれる

  1. 履歴から個人情報を外す(ここを飛ばさない)
  2. 出力の列を先に決めて投げる
  3. 食い違いを人が裁定する

減らせるのは分類と下書きの手間で、どちらが現在の運用かを決める仕事は減りません。

渡す前に決めること

問い合わせ履歴には氏名・電話番号・注文内容が入ります。個人情報保護委員会は、本人の同意を得ずに個人データを含むプロンプトを入力し、それが応答の出力以外の目的で扱われる場合、個人情報保護法の規定に違反することとなる可能性があると注意喚起しています(出典は末尾)。

線引きが決まっていない会社は生成AIの社内ルールの作り方を先に読んでください。当面は氏名・連絡先・注文番号の列を削ってから渡す運用で足ります。この記事の履歴も架空です。

仕込んだ5つの罠

事務用品のネット通販という設定で24件の履歴(ID・日付・問い合わせ・回答)を作りました。罠の部分の抜粋です。

04  2026-05-23  送料はいくらから無料?        5,000円(税込)以上で送料無料です
19  2026-08-07  送料無料はいくらから          3,300円(税込)以上で送料無料です(4月に変更しました)

03  2026-05-19  返品したい(コピー用紙・未開封)      未開封なら到着後8日以内で返品できます
10  2026-06-26  返品したい(インクカートリッジ・開封済み)  開封済みの消耗品は返品をお受けできません

11  2026-07-01  請求書払い(後払い)にできますか   学校・官公庁のお客様のみ請求書払いを承ります

09  2026-06-20  届いた商品が違う   担当の佐々木(000-0000-0000)までご連絡ください

①回答が食い違う2件(04と19) ②条件が違う2件(03と10) ③1件しかない例外(11) ④回答に個人名と直通番号(09) ⑤言い換え3件+よく似た別の問い1件(領収書の発行方法と、インボイス対応の可否)。

「この履歴からFAQを作って」だけで投げた結果

24件が9問に統合され、読みやすいFAQができました。崩れたのは次の4つです。

Q. 請求書払い(後払い)はできますか。
A. 法人のお客様は請求書払いを承っております。

Q. 送料はいくらから無料になりますか。
A. 3,300円(税込)以上のご注文で送料無料です。

Q. 返品はできますか。
A. 未開封の商品に限り、到着後8日以内で承ります。
  • 条件が広がった——「学校・官公庁のみ」が「法人のお客様」に。履歴に無い条件です
  • 食い違いが消えた——3,300円だけが残り、5,000円との食い違いは出力のどこにも残りません
  • 例外が吸収された——「開封済みの消耗品は不可」が「未開封の商品に限り」に畳まれ、消耗品という語が消えました
  • 別の問いが同居した——インボイス対応の可否が、領収書の発行方法の回答文の末尾に入りました

担当者名と直通番号は、FAQの文体に合わないので自然に落ちました。運がよかっただけなので、後述の禁止に明記します。

私が問題だと思うのは、崩れた4つが出力の見た目では分からないことです。 履歴と突き合わせない限り誰も気づきません。

出力の列を先に決めると、消えたものが戻る

同じ履歴に、出力の形だけを足して投げ直します。

あなたはカスタマーサポートのFAQ担当です。
入力:問い合わせ履歴24件(ID・日付・問い合わせ・回答)
出力:次の列の表。1行=1つのQ
  | Q | A | 件数 | 根拠ID | 条件・例外 | 要確認 |
規則:
1. 履歴に無い質問を作らない。件数は根拠IDの個数と一致させる
2. 条件が違うものを同じQにまとめない
3. 同じ質問で回答が食い違う場合は、統合せず「要確認」に両方を書く
4. 件数が1件のものも削らない
5. 個人名・電話番号・メールアドレスは出力しない
禁止:推測で回答を補わない。履歴に書いていない条件を足さない

崩れた4つが戻りました。

QA件数根拠ID条件・例外要確認
領収書の発行方法注文履歴→「領収書を表示」401,06,08,24宛名変更・再表示が可能—
インボイス対応登録番号を記載118——
返品(未開封)到着後8日以内。送料は客先負担203,16不良品は当社負担—
返品(開封済みの消耗品)不可110インクカートリッジ等—
送料無料の金額(裁定待ち)204,19—04は5,000円、19は3,300円で食い違い
請求書払い学校・官公庁のみ111一般法人は対象外—
違う商品が届いた交換品を先に発送109—回答に担当者の直通番号あり

効いたのは「要確認」の列です。食い違いを書く場所が無いと、AIは矛盾を報告する代わりに片方を選びます。気をつけさせるのではなく、置き場所をこちらが作る——プロンプトの書き方の「出力の形を先に決める」と同じ話です。

うまくいかないときの直し方

症状原因直し方
履歴に無い条件が書かれる整える過程で条件が一般化される「条件・例外」の列に履歴の語をそのまま写させる
古い回答と新しい回答が1つになる食い違いを書く場所が無い「要確認」の列を作り、統合を禁止する
1件しかない質問が消える「よくある質問」の語に引かれる「件数1でも削らない」を規則に入れる
件数が合わない根拠を出させていない件数=根拠IDの個数と一致させる
個人名・電話番号が残る指定が無いと回答文を写す禁止に明記し、公開前に数字と敬称を検索する

この作業でAIに任せてよい範囲

当社が社内で使っている線引きです。

作業任せてよいか人が確認する場所
履歴の分類・グループ分け◯境目(条件が違うものが混ざっていないか)
件数の集計△根拠IDの個数と件数が合っているか
回答文の下書き◯条件・例外の語が履歴と同じか
食い違う回答の裁定✕どちらが現在の運用か、担当部署に確認する
個人情報の除去△公開前に人が全文を読む
社外への公開の可否✕価格・送料・返品の条件は責任者が判断する

✕に共通するのは、履歴の中に答えが無いことです。 食い違いをどちらに寄せるかは、過去の記録ではなく現在の運用が決めます。ここを任せると、もっともらしい誤案内が社内に配られます。

自社でやるのが大変なときの頼み先

FAQを作るところまでは担当者1人でもできます。大変になるのはその先で、元の規程や価格表が変わったときに追随させる段階から仕組みの話になります。頼む先は社内RAG構築を頼める会社おすすめ5選に、更新のしかたを公開している会社とそうでない会社を並べてあります。

FAQを整える前に、社内のどこから手を付けるかを見ておく

この作業は問い合わせが多い会社ほど効きますが、手を付ける順番は会社によって違います。

  • AI適合度診断:10問で、自社のどこから手を付けるかが出ます。連絡先の入力は要りません
  • AI見積もり:仕組みとして作る場合の金額の当たりが約3分で出ます

出典

本記事の入出力は、架空の問い合わせ履歴を当社が実際にAIへ渡して得たものです(実行日 2026年9月14日・実行環境 Claude)。

よくある質問

問い合わせ履歴をそのまま貼り付けてもいいですか?
先に社内のルールを決めてからにしてください。問い合わせ履歴には氏名・電話番号・注文内容が入ります。個人情報保護委員会は、本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入力し、それが応答の出力以外の目的で扱われる場合、個人情報保護法違反となる可能性があると注意喚起しています。決め方は「生成AIの社内ルールの作り方」の記事に書きました。この記事で使った履歴も架空のものです。
なぜ食い違う回答が1つになってしまうのですか?
まとめる作業では「揃える」が既定の動作だからです。FAQを作れという指示は「重複をなくして読みやすくしろ」と読まれるので、同じ質問に2つの答えがあると、AIは矛盾を報告するのではなく片方を選んで書きます。選んだこと自体が出力に残らないのが厄介なところです。出力に「要確認」の列を作ると、統合せずにそこへ書かれます。
件数はAIに数えさせてよいのですか?
根拠を書かせるならよいです。件数だけを書かせると数字が合わないことがあります。「根拠となる問い合わせIDを全部書き、件数はIDの個数と一致させる」と指定すると、こちらが数え直せる形になります。数えるのはAIでも、合っているかを見るのは人です。
作ったFAQはそのまま社外に出せますか?
出せません。この手順で作れるのは社内用の下書きまでです。社外向けのFAQは表示の義務や表現の責任が伴うので、公開の可否は責任者が判断してください。とくに価格・送料・返品の条件は、履歴の古い回答が混ざっていると誤った案内になります。
どの生成AIでも同じ手順で使えますか?
使えます。やっていることは「出力の列を先に決める」「根拠IDを書かせる」「統合を禁止する」の3つだけなので、ツールに依存しません。この記事の実行例は、当社が普段使っている環境(Claude)で実際に流したものです。

自社の場合、いくら?

作りたいものを入力するだけで、AIが約3分で概算見積もりを作成します。一般的なSIer相場との比較つき、無料・営業からのしつこい連絡はありません。

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