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【悲報】AI研修、完全内製がいちばん助成が薄いです

人材開発支援助成金の支給要領(令和8年8月3日版)を原文で読むと、AI研修の内製と外注は「二択」ではありません。外部講師を呼んでも自社主催なら事業内訓練です。どちらを選ぶかで助成対象になる経費がまるごと変わる点を、対象経費・講師要件・対象外経費の3つの表に整理しました。

佐野 泰規佐野 泰規株式会社AIエージェント 代表取締役約9分で読めます
クリップボードに挟んだ請求書にペンを添えて内容を確認している手元
Pexels / Kindel Media

この記事でわかること

  • 人材開発支援助成金では、「外部講師を呼ぶ=外注」ではありません。支給要領は「部外講師の活用や社外の場所で行われる訓練等であっても、事業主が企画し主催したものは事業内訓練とする」と定義しています
  • 事業内訓練で助成対象になるのは講師謝金(実訓練時間1時間あたり1万5千円が上限)・講師旅費・会場借上費・教材費だけ。教育訓練機関に委託する事業外訓練なら受講料そのものが対象になります
  • 完全内製はいちばん助成が薄い。部内講師の謝金は対象経費に挙がっておらず、繰り返し使える教材(学習ビデオ等)とeラーニングの経費は明文で対象外です
  • 講師要件も非対称。部内講師は「実務経験10年以上」等の3要件のみで、部外講師にある「講師経験3年以上」の道がありません

AI研修を内製にするか外注にするか。支払総額だけを見れば内製が安く見えますが、人材開発支援助成金を使う前提だと、この比較は成り立ちません。

理由は単純で、制度側は「内製か外注か」という区切り方をしていないからです。支給要領が使っている区切りは「誰が企画し主催したか」。ここを勘違いしたまま契約すると、受講料として払ったつもりの金額が、まるごと対象経費から外れます。

以下は人材開発支援助成金 人材育成支援コースの支給要領(令和8年8月3日版)を原文で読んだ整理です。

AI研修の内製と外注の比較は、まず「主催者が誰か」から入る

支給要領の用語定義です。

レ 事業外訓練 OFF-JT であって公共の職業能力開発施設、学校教育法(昭和22 年法律第26 号)上の教育機関、各種学校、専修学校、認定職業訓練施設、他の事業主団体等が企画し主催している訓練等をいう。

ソ 事業内訓練 OFF-JT であって申請事業主自らが主催し、事業内において集合形式で実施する訓練等をいう。部外講師の活用や社外の場所で行われる訓練等であっても、事業主が企画し主催したものは事業内訓練とする。

——厚生労働省「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)支給要領」(令和8年8月3日)(2026年8月28日閲覧)

太字にしたところが本題です。外部の講師を招いても、貸会議室でやっても、企画・主催が自社なら「事業内訓練」。 「外部に頼んだから外注=事業外訓練」ではありません。

だから実務上の選択肢は2つではなく、3つになります。

形制度上の区分助成対象になる主な経費
① 部内の社員が講師をやる事業内訓練ほぼ無い(下記参照)。賃金助成は要件を満たせば残る
② 外部講師を招いて自社主催事業内訓練講師謝金・講師旅費・会場借上費・教材費
③ 教育訓練機関に委託する事業外訓練入学料・受講料・教科書代等

②と③は、現場から見れば「外部の人にAI研修をやってもらう」で同じに見えます。契約の形が違うだけで、助成の対象が別物になる。 ここが今日いちばん書きたかったところです。

事業内訓練で対象になる経費は、4種類しかない

支給要領が事業内訓練の対象経費として挙げているものです。金額の上限まで書いてあります。

経費上限・条件(要領の記載)
部外講師の謝金・手当1訓練コースにつき、助成対象と認められた実訓練時間1時間あたり1万5千円(所得税控除前)
部外講師旅費一の職業訓練実施計画あたり国内招聘5万円・海外招聘15万円が上限。宿泊費は1日1万5千円、日当は1日3千円が上限
施設・設備の借上費教室・実習室・ホテルの研修室等の会場借用料、マイク・スクリーン等の備品借料。助成対象コースのみに使用したことが確認できるもの
教科書・教材の購入または作成費助成対象コースのみで使用するもの。教科書は頒布を目的として発行される出版物

旅費には見落としやすい条件が付いています。国内招聘の場合、東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県・京都府・大阪府・兵庫県以外に所在する事業所が、道県外から招聘する部外講師に限るという限定です。地方の会社が東京から講師を呼ぶ場合は対象になりますが、その逆や都市部内の移動は対象外になります。

このほかに「訓練コースの開発費」という項目もありますが、対象は大学等(大学・高等専門学校・専修学校・各種学校)に委託して開発した場合に限られています。自社で教材を作った工数は、ここに入りません。

完全内製がいちばん助成が薄い、という結論になる

上の表を見返してほしいのですが、謝金として挙がっているのは「部外講師」だけです。部内講師の謝金・手当は対象経費の一覧に出てきません。

さらに、対象とならない経費(06022)に、内製でやりたくなることがそのまま並んでいます。

b 繰り返し活用できる教材 パソコンソフトウェア、学習ビデオ等 c 訓練等以外の生産ライン又は就労の場で汎用的に用い得るもの等 パソコン及びその周辺機器等 d eラーニングによる訓練等又は通信制による訓練等に係る経費

社内で動画教材を作り、それを繰り返し使い、eラーニング化する——AI研修の内製でいちばんやりたい形が、経費助成の対象から外れています。 そもそも支給対象訓練等の規定でも、eラーニング・通信制は事業内訓練では支給対象外とされています。

誤解のないように補足すると、賃金助成のほうは別勘定です。受講した労働者の所定労働時間内の訓練には賃金助成が付き得るので、内製がまったく報われないわけではありません。対象になる時間の数え方は賃金助成の対象時間の考え方に書きました。ただ、「教材を作り込む工数が助成で戻ってくる」という期待は、要領を読む限り成立しません。

講師要件が、内製の現実的な壁になる

もうひとつ、内製を検討する前に見ておくべき非対称があります。部外講師と部内講師で、認められる要件の数が違います。

部外講師部内講師
職業訓練指導員免許を有する○○
1級の技能検定に合格○○
当該分野の実務経験(講師経験を含まない)が10年以上○○
当該分野の指導員・講師経験が3年以上○無し
公共職業能力開発施設・大学等・各種学校等に所属する指導員等○—

部内講師には「講師経験3年以上」という道がありません。 免許も技能検定も無い人が部内講師になるには、当該分野の実務経験10年以上が要ります。

私がここで引っかかるのは、AIという分野で「実務経験10年以上」を社内で満たせる人が何人いるかです。生成AIが業務で使われ始めたのは2023年前後で、そこから数えて10年には届きません。「当該分野」をどう解釈するか(データ分析やシステム開発の経験を含められるか)は労働局の判断になるので断定はしませんが、社内の若手エースに講師をやらせる前に、その人が要件のどれで通るのかを先に確認したほうがいいとは言えます。

「元社員に頼む」「グループ会社に頼む」は3年の縛りがある

内製と外注のあいだで、いちばんやりがちで、いちばん静かに落ちるのがここです。要領は、対象とならない経費として次の相手を挙げています。

  • 申請事業主の代表者・役員等、申請事業主が雇用する者
  • 代表者等の配偶者、または3親等以内の親族
  • 親会社・子会社の代表者等、議決権の過半数で結ばれた別事業主の代表者等
  • 訓練開始日の前日から起算して3年前の日から3年を経過するまでの期間のいずれかの日に、申請事業主の代表者等であった者・雇用されていた者

最後の1行が効きます。独立した元社員に講師を頼むのは、退職から3年経つまで対象外ということです。「社内のことを分かっている元同僚に頼むのがいちばん早い」という判断は、助成金を使う前提だと成立しません。

結局どう決めるか

3つの形を、私ならこの順で当てはめます。

  1. AIの実務経験10年以上を満たす人が社内にいて、賃金助成だけで十分なら①(完全内製)。 ただし教材の作り込みは自腹だと割り切る
  2. 教える内容を自社の業務に強く寄せたいなら②(外部講師+自社主催)。 講師謝金が1時間1万5千円まで対象になるので、時間数が多いほど効きます。会場費・教材費も拾えます
  3. 手続きの手間を減らして受講料をまるごと対象にしたいなら③(教育訓練機関に委託)。 事業外訓練は受講料・教科書代が対象なので、対象経費の計算がいちばん単純です

なお③でeラーニングを選ぶ場合、要領は「計画届の提出日時点で、自社のホームページに当該訓練等の情報を掲載していない民間の教育訓練機関」を支給対象外としています。公開講座として広く募集されている講座かどうかを、申し込み前に見てください。

研修そのものの費用感は生成AI研修の費用相場に、制度の選び方はAI研修に使える助成金・補助金の一覧にまとめてあります。弊社のAI研修は③の形(教育訓練機関への委託)でも②の形(貴社主催・当社が講師)でも組めるので、どちらが有利かを見積もり段階で並べて出します。

最後に、いつもの注意書きを。助成金は申請すれば必ず受けられるものではありません。 審査があり、訓練開始前に職業訓練実施計画届の提出が必要です。金額・要件は改正されるので、実際に動かす前に最新の支給要領と管轄の労働局で確認してください。要領そのものの経過措置の読み方は事業展開等リスキリング支援コースの経過措置に書いています。

内製か外注かを決める前に、いまの立ち位置を測っておく

この判断は、社内にどれだけ土台があるかで答えが変わります。同じ会社でも、業務によって内製と外注が分かれるのが普通です。

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出典

よくある質問

AI研修は内製と外注のどちらが安いですか?
支払総額だけを見れば内製が安く見えますが、人材開発支援助成金を使う前提だと逆転することがあります。完全内製(部内講師)は経費助成の対象になる支出がほとんど発生しないためです。教育訓練機関に委託する事業外訓練なら受講料そのものが対象経費になります。支給要領にもとづく整理です。
外部講師を呼べば「外注」になりますか?
なりません。支給要領は「部外講師の活用や社外の場所で行われる訓練等であっても、事業主が企画し主催したものは事業内訓練とする」と定義しています。事業外訓練になるのは、教育訓練機関に委託して行う場合です。
社内でeラーニング教材を作った費用は助成されますか?
支給要領では、eラーニングによる訓練等・通信制による訓練等は事業内訓練では支給対象外とされています。また「繰り返し活用できる教材(パソコンソフトウェア、学習ビデオ等)」も対象とならない経費に明記されています。
元社員や関連会社に講師を頼むのは問題ありませんか?
支給要領は、申請事業主の代表者・役員・雇用する者・その配偶者や3親等以内の親族、親会社・子会社の代表者等に加えて、訓練開始日の前日から起算して3年前の日から3年を経過するまでの期間に代表者等であった者・雇用されていた者を、対象とならない経費の相手方として挙げています。頼む前に確認が必要です。
助成金は申請すれば必ず受けられますか?
いいえ。審査があり、訓練開始前に職業訓練実施計画届の提出が必要です。要件を満たしていても不支給になる場合があります。金額・要件は改正されるため、必ず最新の支給要領と管轄の労働局で確認してください。

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