株式会社AIエージェント

AIエージェントを複数運用する分け方|分けても精度は同じでした

AIエージェントを複数運用するときの分け方を、架空のメール8通の仕分け・金額日付の抜き出し・返信の下書きで試しました。1本にまとめても3本に分けても、仕分けはどの回も同じでした。差を生んだのは分け方ではなく決まりで、「約束しない」と書かない回は8通中3通の下書きが約束か、それに近い書き方をしていました。分けるかは止める場所で決めます。

佐野 泰規佐野 泰規株式会社AIエージェント 代表取締役約6分で読めます
架空のメール8通の仕分け・抜き出し・返信の下書きを、1本のAIエージェントで処理した場合と3本に分けた場合の結果を並べた表
図版=株式会社AIエージェント(当社環境での試行結果をもとに作成)

AIエージェントで仕事を増やしていくと、「1本に全部やらせるか、仕事ごとに分けるか」で迷います。分けたほうが精度が上がりそうに思えます。

架空のメール8通を、仕分け・金額と日付の抜き出し・返信の下書きまで処理させました。1本にまとめた場合と、3本に分けた場合です。仕分けの結果は、どの作り方でも7回すべて同じでした。 差を生んだのは分け方ではなく、決まりを書いたかどうかでした。

AIエージェントを複数運用する分け方|この記事で作るもの

作るのは、止める場所ごとにAIエージェントを分け、つなぎ目を機械で確かめる形です。生成AIには OpenAI の API(GPT-6 Sol)を使いました。ほかの生成AIでも、分け方の考え方は同じです。

準備|試すのは架空のメールだけ

架空の会社「サンプル工業」に届いたメールを8通用意しました。請求額の食い違い(見積もり12万円・請求13万2千円)、部品の不足、担当者変更の挨拶、カタログの依頼、支払日の相談、寸法の不良、打ち合わせの依頼、請求書の宛名変更です。実際のお客様のメールは使いません。どの情報を外部のAIに入れてよいかは生成AIの社内ルールの作り方にまとめました。

仕分けの選択肢は、種類5つ(請求・支払/納品・品質/営業・資料/連絡のみ/要確認)と担当3つ(経理/製造/営業)に固定しました。選択肢を固定する理由はAIエージェントのプロンプトの書き方に書いています。

作る手順|1本と3本を比べてから、止める場所で分ける

手順1 1本にまとめて頼む

次のメールを1通ずつ処理してください。JSONの配列だけを返す。
各要素は {"no","種類","担当","金額","日付","返信下書き"}。
(種類と担当の選択肢)金額・日付はメールに書いてあるものだけ。返信下書きは3文以内。

2回実行しました。仕分けと抜き出しは2回とも同じで、No.1の金額は「見積もり12万円、請求13万2千円」と正しく抜いています。ところが2回目の返信の下書きに、次の文が混ざりました。

No.4  お問い合わせありがとうございます。製品カタログをお送りします。
No.8  ご連絡ありがとうございます。請求書の宛名を「株式会社サンプル商事」に変更いたします。
No.2  …至急確認し、明日のライン使用に間に合うよう対応をご連絡します。

8通中3通が、まだ決めていないことを約束するか、約束に近い書き方をしています。 No.4とNo.8ははっきりした約束で、No.2は「間に合うよう」と期待させる書き方です。1回目は0通でした。

手順2 3本に分けて頼む

同じ8通を、仕分け・抜き出し・返信の下書きの3本に分けて頼みました。返信の下書きの指示には、次の1行を足しています。

約束(発送日・返金・値引き・承諾)をしない。事実を確認して担当から連絡する、までにとどめる。

2回とも、仕分けは手順1と同じ結果で、返信の下書きは「確認し、担当者からご連絡いたします」で止まっていました。

手順3 1本に同じ決まりを足して比べる

分けたから良くなったのか、決まりを書いたから良くなったのかを分けるため、手順1の1本に同じ1行を足して3回実行しました。3回とも、約束した下書きは0通でした。 仕分けも手順1・2と同じです。

1本でも3本でも、精度は同じでした。違いは、決まりを書いたかどうかだけです。

人が止める場所|分けるかは止め方で決める

それでも私は、この3つの仕事を分けて作ります。理由は精度ではなく、止める場所が違うからです。

  • 仕分け……選択肢の一覧と機械で照合して、そのまま担当へ回す
  • 金額・日付の抜き出し……メールの本文に同じ文字列があるかを機械で照合して、台帳へ入れる
  • 返信の下書き……人が読んで、約束が混ざっていないかを確かめてから送る

1本にまとめると、人の確認が要る仕事と、機械の確認で済む仕事が1つの出力に混ざります。返信の下書きの決まりを直したときも、仕分けまで試し直すことになります。分けておけば、直した1本だけを試せます。

分けたエージェント同士は、決めた形(今回はJSON)でつなぎ、受け取る側で選択肢に無い値や空欄が無いかを確かめてから使います。送る前に止める考え方はAIエージェントの暴走を止める方法に書きました。

うまくいかないときの直し方

  • 返信の下書きが約束してしまう……「約束しない」と、約束にあたる言葉(発送日・返金・値引き・承諾)を指示に書く。人の確認は外さない
  • 分けたら、つなぎ目で値が崩れる……前のエージェントの出力の形を固定し、受け取る側で機械の照合を1段置く
  • どこで止まったか分からない……エージェントごとに、処理した件数と人に回した件数をログに残す。数え方はAIエージェントの効果測定のやり方に書いた

判定表|まとめるか、分けるか

仕事の組み合わせまとめてよいか理由
止める場所が同じ(どちらも機械の照合)まとめてよい確かめ方が同じなので1本で足りる
機械の照合で進む仕事と、人が承認する仕事分ける人の確認を、機械で済む仕事から切り離す
承認する人が違う(経理と営業など)分ける回す先と承認の記録を分ける
片方だけ頻繁に直す分ける直した1本だけを試し直せる
外に出す(送信・登録)仕事分ける送る前に必ず人が止める

自社で作るのが大変なときの頼み先

複数のエージェントのつなぎ目と止める場所まで含めて外に頼むなら、何に料金を払うかで会社が分かれます。AIエージェント開発会社おすすめ6選で比べました。

分ける前に、どこで人が止めるかを書き出す

AIエージェントを何本にするかは、止める場所を書き出すと決まります。当社のAI適合度診断は10問で、経営・活用・人材・データ・ルールの5分野から自社の現在地を点数にします。連絡先の入力は要りません。 メールの仕分けから返信の下書きまでを、止める場所ごとに分けて組む場合の費用の目安は、AI見積もりで先に確かめられます。

出典

  • Responses|OpenAI API Reference(2026年10月1日閲覧)
  • 入出力例は、当社の環境で架空のメール8通を OpenAI の Responses API(gpt-6-sol)に渡し、1本にまとめた指示(決まり無し2回・決まりあり3回)と3本に分けた指示(2回)で実行した結果と、当社で書いた比較スクリプトの出力(2026年10月1日)

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