AIで文章を校正するやり方|「校正して」だと半分が別の文になります
同じ案内文を「校正してください」だけで渡した場合と、直してよい範囲を4つの規則で指定した場合で、返ってきた文章を差分で数えました。素の依頼は原文との一致率54.0%、範囲指定は98.9%。消えたのは誤字ではなく「ご安心ください」という判断のほうでした。実測の手順と、AIに任せてよい範囲の判定表をまとめます。

この記事でわかること
- 架空の価格改定の案内文(421字)を、同じAIに2回渡した。変えたのは「直してよい範囲を指定したかどうか」の1つだけ
- 素の「校正してください」は 553字になって返ってきた——変更箇所23・原文から158字が消え290字が足され、原文との一致率は54.0%。件名・頭語・結語・記書き・末文・連絡先欄が足され、「ご安心ください。」は削除された
- 規則4つを渡した2回目は 418字——変更箇所5・消えた6字・足された3字・一致率98.9%。直したのは誤字1・表記ゆれ1・二重敬語1だけで、数字・日付・固有名詞は1文字も動いていない(代わりに「提案(未反映)」を9件出した)
- 「校正して」で返ってくるのは校正ではなく清書。 動いた文字数は448字と9字、変更箇所は23か所と5か所だった
社外に出す文書をAIに見せて、誤字だけ直してほしかったのに全部書き直されて戻ってきた——これは指示が足りないから起きます。
同じ案内文を、同じAIに2回渡して差分を数えました。変えたのは「直してよい範囲を指定したかどうか」の1つだけです。結果は一致率 54.0% と 98.9%。動いた文字数は448字と9字でした。
そして消えたのは誤字ではありません。書き手が意図して入れた「ご安心ください。」のほうでした。
AIで文章を校正すると何が変わるか
誤字を見つける速さは、たしかに人より速いです。今回の実測でも、仕込んだ誤字・表記ゆれ・二重敬語は両方の回で見つかっています。
問題は、見つけたあとです。今回、範囲を指定しない「校正してください」に返ってきたのは、文書全体を社外文書の形に整え直したものでした。良くしようとすれば構成も語調も触ることになるので、校正ではなく清書が返ってくるという形です。
準備|何を入れてよいかを先に決める
社外文書には取引先名・担当者名・金額・見積番号が入ります。そのまま貼る前に、社内のルールを決めてください。 個人情報保護委員会は、生成AIサービスへの個人情報の入力について注意喚起を出しています。線引きの作り方は生成AIの社内ルールの作り方にまとめました。
この記事で使った文書は、すべて架空のダミーです。
手順|同じ案内文を、範囲の指定あり・なしの2回渡した
実行日は2026年9月20日、環境はClaudeです。使ったのは架空の「株式会社サンプル物産」から「株式会社サンプル商会」宛の価格改定の案内文(空白を除いて421字)で、次を仕込みました。
- 誤字:「お忙しいとことろ恐縮ですが」
- 表記ゆれ:「お問い合わせ」と「お問合せ」の混在
- 二重敬語:「拝見させていただきました」
- 触られたら困るもの:2026年11月1日/10月31日/平均8.5%/全12品番/担当:山田
- 書き手が意図して入れた一文:「ご安心ください。」
1回目:「校正してください」だけ
返ってきたのは553字。差分を取ると、変更箇所23・原文から158字が消え、290字が足され、一致率は54.0%でした。原文の半分近くが別の文になっています。
足されたのは、発信日の欄・件名「製品価格改定のお知らせ」・頭語「拝啓」・結語「敬具」・箇条書きを挟む「記」〜「以上」・末文「末筆ながら〜」・TELとメールの欄を含むお問い合わせ先ブロックです。社外文書として正しい形に整っています。
同時に、こうなりました。
| 原文 | 1回目の出力 |
|---|---|
| 10月31日まで | 2026年10月31日まで(年を補完) |
| 平均8.5%の値上げ | 平均8.5%の引き上げ |
| 改定させていただくこととなりました | 改定させていただきます |
| ご安心ください。 | (削除) |
誤字・表記ゆれ・二重敬語は3つとも直っています。 問題はその外側です。
2回目:直してよい範囲を4つの規則で指定した
同じ文書に、次を付けました。
【必ず守る規則】
1. 直してよいのは次の3つだけ。①明らかな誤字・脱字 ②表記ゆれの統一 ③文法・敬語の誤り。
2. それ以外は1文字も変えない。構成・見出し・挨拶文の追加、言い回しの言い換え、
語調の調整、削除はしない。
3. 数字・日付・固有名詞・金額・品番・担当者名は絶対に変えない(年の補完もしない)。
4. 直したほうがよいと思ったが規則1の外だったものは、本文には反映せず、
修正後の全文のあとに「提案(未反映)」として箇条書きで出す。
返ってきたのは418字。変更箇所5・消えた6字・足された3字・一致率98.9%です。直ったのは3点だけでした。
- 誤字「お忙しいとことろ」→「お忙しいところ」
- 表記ゆれ「お問合せの際は」→「お問い合わせの際は」
- 二重敬語「拝見させていただきましたが」→「拝見いたしましたが」
数字・日付・固有名詞は1文字も動いていません。「ご安心ください。」も残りました。
そのうえで、「提案(未反映)」が9件出ています——「記」「以上」が無い/「10月31日」に年が無い(規則3により未補完と明記)/「値上げ」と「改定」が混在/「助かります」が口語的/連絡先が無い、など。気づいてはいるが、本文は動かしていないという形です。
うまくいかないときの直し方
「校正」という言葉を使わない
「校正して」は範囲を含まない依頼です。「誤字脱字と表記ゆれだけ直して」と、直す対象を名詞で書くほうが確実です。
「それ以外は1文字も変えない」を必ず入れる
規則1(直してよいもの)だけでは足りません。規則2(それ以外は変えない)が効いています。 追加・言い換え・削除を個別に禁止すると、さらに動きません。
数字と固有名詞は別立てで守る
今回、素の依頼では年が親切心から補完されました。正しく見えるぶん気づきにくいので、「年の補完もしない」まで書くのが安全です。
気づいたことは捨てさせず、別に出させる
規則4を入れないと、AIが見つけた9件は消えます。本文は動かさず、指摘だけ受け取る形にすると、直すかどうかを人が決められます。
判定表|AIに校正を任せてよい範囲と、人が確認する場所
| 文書の種類 | 任せてよいか | 人が必ず確認する場所 |
|---|---|---|
| 社内メモ・議事録の下書き | ○ 範囲指定なしでもよい | 固有名詞と数字 |
| 社外向けの案内・依頼 | △ 範囲指定つきで | 書き手が意図して入れた一文が残っているか |
| 金額・日付・条件が入る通知 | △ 範囲指定つきで | 数字・日付が1文字も動いていないか(差分で見る) |
| 契約書・規程・法定の文書 | × 本文を書き換えさせない | 指摘だけ受け取り、反映は人が行う |
| 謝罪文・断りの文 | × 語調は人が決める | 削られた一文が無いか |
判定の基準は1つです——「その一文は、誰が入れたのか」。 書き手が意図して入れた文が消えても、出力は日本語として自然なので気づけません。差分で見るのが唯一の確実な方法です。
自社でやるのが大変なときの頼み先
毎回この規則を書くのは現実的ではないので、定型の依頼文を社内で1つ決めて共有するのが早いです。誰がどこまで直してよいかは、文書の種類ごとに社内で合意しておく話になります。
その合意づくりを外で学ぶなら、研修の選び方を経営者・管理職向けAI研修の比較にまとめました。AIの出力が成果物に混ざる問題そのものは、AIに表を集計させるときの検算のやり方でも同じ形で出ています。
自社の文書が、どこまでAIに任せられる状態かを点数にしておく
上の判定表は、自社がどの文書をどれだけ外に出しているかが分かって初めて使えます。差分を見る習慣があるか、直してよい範囲の合意があるか、気づける人が下流にいるかで、任せられる範囲が変わります。
AI適合度診断は10問で現在地を点数にします。連絡先の入力は要りません。 文書づくりそのものを仕組みにしたいなら、AI見積もりで約3分の概算が出ます。
出典
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(令和5年6月2日)(2026年9月20日閲覧)
- 本記事の入出力は、架空の会社・架空の案内文で当社が実際にAIへ渡して得たものです(実行日 2026年9月20日・実行環境 Claude)。実在の取引先の情報は使っていません。差分の数値は Python の
difflib.SequenceMatcher(空白を除いた文字列で比較)で算出しました。
よくある質問
- AIに文章の校正を任せても大丈夫ですか?
- 範囲を指定すれば任せられます。指定しないと清書されます。今回の実測では、素の「校正してください」は原文との一致率が54.0%で、原文の半分近くが別の文になりました。範囲を4つの規則で指定した2回目は98.9%で、直ったのは誤字1・表記ゆれ1・二重敬語1だけでした。
- 校正の指示はどう書けばいいですか?
- 「直してよいもの」を列挙し、「それ以外は1文字も変えない」と書いてください。今回使ったのは4つです——①直してよいのは誤字脱字・表記ゆれ・敬語の誤りだけ ②それ以外は1文字も変えない(構成の追加・言い換え・削除をしない)③数字・日付・固有名詞・金額は絶対に変えない ④規則の外で気づいたことは本文に反映せず別に出す。
- 勝手に直されて困るのはどこですか?
- 数字・日付・固有名詞と、書き手が意図して入れた一文です。今回、素の依頼では「10月31日」が「2026年10月31日」に補完され、「値上げ」が「引き上げ」に言い換えられ、「ご安心ください。」が削除されました。誤字は見落とされていません。消えるのは判断のほうです。
- AIが直さなかった問題はどうやって拾いますか?
- 「規則の外で気づいたことは本文に反映せず、別に出して」と依頼に入れてください。今回の2回目は、記書きが無い・年の表記が揃っていない・「値上げ」と「改定」が混在している・連絡先が無い、など9件を「提案(未反映)」として出しました。本文は動かさず、直すかどうかは人が決められます。
- 取引先の実名が入った文書をAIに入れてもいいですか?
- 使っているプランの設定と社内規程で決まります。社名・担当者名・金額・見積番号が入った文書をそのまま貼る前に、社内のルールを決めてください。個人情報保護委員会は、生成AIサービスへの個人情報の入力について注意喚起を出しています。線引きの作り方は当社の別記事にまとめています。
自社の場合、いくら?
作りたいものを入力するだけで、AIが約3分で概算見積もりを作成します。一般的なSIer相場との比較つき、無料・営業からのしつこい連絡はありません。
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