社内問い合わせをAIで自動化する手順|AIは規程にない「聞く先」を作った
社内問い合わせ対応をAIエージェントで自動化する手順を、架空の社内規程7条と質問10件で試しました。規程にある6件はどの回も正しく答えましたが、そのまま答えさせると、規程に書いていない「人事担当」「車両管理の担当部署」を聞く先として案内しました。根拠の条と担当へ回すかを返させ、回す先は決まりで固定します。

「交通費の申請はいつまで?」「在宅勤務は週何日まで?」。総務や人事に届く社内の問い合わせは、答えが規程に書いてあるものがほとんどです。ここをAIエージェントに任せると、担当者は規程に書いていない質問だけを見ればよくなります。
架空の社内規程7条と質問10件で試しました。規程にある6件は、どの回も正しく答えました。 困ったのは、答えられない質問のほうです。そのまま答えさせると、AIは規程に書いていない「人事担当」「車両管理の担当部署」を、聞く先として案内しました。
社内問い合わせをAIで自動化する手順|この記事で作るもの
作るのは、質問ごとに「回答」「根拠の条」「担当へ回すか」を返すAIと、その後ろに置く回す先を固定する決まりです。生成AIには OpenAI の API(GPT-6 Sol)を使いました。ほかの生成AIでも、返させる項目と決まりの置き方は同じです。
準備|渡すのは規程だけ、社員の記録は渡さない
渡すのは、条番号の付いた社内規程です。今回は架空の会社「サンプル工業」の経費精算規程・在宅勤務規程・休暇規程から、7条を抜き出しました。
社員の勤怠記録や有給の残日数は渡しません。個人の記録を扱うには、誰が誰の記録を見てよいかという権限の設計が別に必要です。どの情報を外部のAIに入れてよいかは生成AIの社内ルールの作り方にまとめました。
質問は10件用意しました。規程に答えがあるもの6件、規程に書いていないもの2件(副業、社用車の私用)、個人の記録が要るもの1件(有給の残日数)、規程の例外にあたるもの1件(在宅勤務を週3日にしたい)です。
作る手順|根拠の条と、回すかどうかを返させる
手順1 比べるために、そのまま答えさせる
まず、次の指示で10件に答えさせました。
あなたは社内の問い合わせ窓口です。次の社内規程をもとに、社員からの質問に答えてください。
規程にある6件は正しく答え、残る4件も「規程に定めがありません」と返しました。問題は、その後に続く案内です(原文のまま抜粋)。
7. 副業については、提示された規程に定めがありません。人事担当に確認してください。
8. …提示された規程からは判断できません。車両管理の担当部署に確認してください。
9. …勤怠システムまたは人事担当に確認してください。
「人事担当」「車両管理の担当部署」「勤怠システム」は、渡した規程のどこにも書いていません。 規程の中身は作らなかったのに、聞く先は作りました。社員はこの案内を信じて、存在しない窓口を探すことになります。
手順2 返す項目を決めて答えさせる
指示を変え、質問ごとにJSONで返させました。
規程に書いてあることだけで答えてください。各要素は
{"no", "回答", "根拠":"規程名 第◯条"(書いていなければ空文字), "担当へ回す":true/false, "理由"}。
規程に書いていないこと、個人の記録が要ること、規程の例外にあたることは、
推測で答えず 担当へ回す を true にしてください。
返ってきた結果です(抜粋)。
{"no":1, "回答":"…翌月5日までに精算システムで申請してください。", "根拠":"経費精算規程 第3条", "担当へ回す":false}
{"no":8, "回答":"…この規程からは判断できません。", "根拠":"", "担当へ回す":true}
{"no":10, "回答":"規程上、在宅勤務は週2日までです。…", "根拠":"在宅勤務規程 第2条", "担当へ回す":true}
聞く先を案内する文は消えました。同じ指示で2回実行し、2回とも No.7〜10 の4件が「担当へ回す」になりました。
手順3 根拠の条を機械で照合する
AIが返した「根拠」の文字列が、渡した規程に実在するかを短いスクリプトで照合しました。2回とも、根拠の条はすべて規程に実在していました。ここはAIに確かめさせず、機械で確かめます。
人が止める場所|回す先はAIに決めさせない
手順2の結果の後ろに、AIではない決まりを置きます。
- 「担当へ回す」が true、または「根拠」が空欄なら……総務の受付窓口1つに回す。回す先の名前はAIに書かせず、決まりで固定する
- 「根拠」の条が規程に見つからなければ……回答を出さずに窓口へ回す
- 回した質問は、窓口の担当者が答えたら閉じる……同じ質問が何度も来たら、規程に書き足す候補にする
私なら、AIが答えた回答にも根拠の条のリンクを付けて社員に返します。社員が原文を1クリックで確かめられれば、AIの読み違いにも気づけます。送る前や書き込む前にAIの外で止める考え方はAIエージェントの暴走を止める方法に、回した件数の数え方はAIエージェントの効果測定のやり方に書きました。
うまくいかないときの直し方
- 聞く先を勝手に案内する……回答の文に案内を書かせない。案内は決まりの側で、固定の窓口名を差し込む
- 規程にない例外を認めてしまう……「規程の例外にあたることは担当へ回す」を指示に書き、例外を扱う質問を試験用に数件入れておく
- 同じ質問なのに答えが揺れる……同じ質問を2回投げて、回答か「担当へ回す」が違ったものは窓口へ回す
判定表|AIに任せてよい範囲と、人が確認する場所
| 質問の種類 | AIに任せてよいか | 確かめる方法 |
|---|---|---|
| 規程に答えが書いてある | 任せてよい | 根拠の条が規程に実在するかを機械で照合 |
| 規程に書いていない | 任せない | 窓口へ回す。多ければ規程に書き足す |
| 個人の記録が要る(残日数など) | 任せない | 権限の設計ができるまでは窓口へ |
| 規程の例外にあたる | 任せない | 例外を認めるのは人 |
| 回す先の案内 | 任せない | 決まりで窓口を1つに固定 |
社内FAQそのものを問い合わせ履歴から整える手順は、ChatGPTで社内FAQを作る手順に書きました。
自社で作るのが大変なときの頼み先
社内の文書を検索して答える仕組みを外に頼むなら、作った後に誰が文書を直すかで会社が分かれます。社内RAG構築を頼める会社おすすめ5選で違いを比べました。
問い合わせを任せる前に、どの規程から整えるかを決める
AIが答えられるのは、条番号の付いた規程がある質問だけです。当社のAI適合度診断は10問で、経営・活用・人材・データ・ルールの5分野から自社の現在地を点数にします。連絡先の入力は要りません。 回す先の決まりまで含めて社内問い合わせのAIエージェントを作る場合の費用の目安は、AI見積もりで先に確かめられます。
出典
- Responses|OpenAI API Reference(2026年9月29日閲覧)
- 入出力例は、当社の環境で架空の社内規程7条と質問10件を OpenAI の Responses API(gpt-6-sol)に渡し、指示を変えて実行した結果(そのまま答えさせる指示で1回、項目を決めた指示で2回)と、当社で書いた照合スクリプトの出力(2026年9月29日)
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