株式会社AIエージェント

AIエージェントに任せる業務の決め方|賢さより「戻せるか」

AIエージェントに任せる業務の範囲は、AIの賢さではなく「間違えたときに戻せるか」で決めます。業務を操作に分け、操作ごとに戻し方を1行で書き、書けない操作の直前にだけ人の承認を置く手順を、ダミーの請求書転記で実際に動かした判定の出力つきで書きました。Claude Code の巻き戻しが戻せない範囲も公式ドキュメントで確かめています。

佐野 泰規佐野 泰規株式会社AIエージェント 代表取締役約7分で読めます
業務の操作を「任せる」「任せる+ログ」「人の承認」の3つに仕分けた図
図版=株式会社AIエージェント

AIエージェントに何を任せるか。「AIが間違えないか」で考え始めると、答えは出ません。間違えない業務はないからです。決め手は間違えるかどうかではなく、間違えたときに戻せるかどうかです。

戻せる操作なら、任せて後から直せばいい。戻せない操作の直前にだけ人が立てば、業務の大半は任せたままにできます。この記事は、その線の引き方を手順で書きます。

AIエージェントに任せる業務の範囲は「戻せるか」で決める

判定の単位は「業務」ではなく「操作」です。「請求書の処理を任せる」と業務でまとめて考えると、読む・書く・送る・消すが混ざったまま判断することになり、全部任せるか全部任せないかの二択になります。

操作に分けると、ほとんどの操作は戻せて、戻せないのは一部だとわかります。人が見るのはその一部だけにします。

道具は当社が自社の業務を回している Claude Code を例にしますが、判定の考え方はほかの道具でも同じです。

準備|入れてよい情報の線引きを先に決める

戻せるかどうかとは別に、そもそも入れてよい情報かを先に決めます。戻せる操作でも、顧客の氏名・連絡先・契約金額を入力させた時点で、情報は外に出ています。線引きの作り方は生成AIの社内ルールの作り方にまとめました。この記事の例は、すべて架空のダミーです。

作る手順|操作に分けて、戻し方を1行ずつ書く

手順1 業務を操作に分ける

ダミーの「請求書の転記」を例にします。1つの業務が、5つの操作に分かれます。

  1. 請求書のCSVを読む
  2. 転記用の下書きファイルを作る
  3. 会計ソフトへ仕訳を登録する
  4. 取引先へ確認メールを送る
  5. 元のCSVを削除する

手順2 操作ごとに「戻し方」を1行で書く

操作一覧を表にして、戻し方の列を人が埋めます。ここで書けなかった行が、人の確認を置く場所です。

操作	種類	戻し方
請求書CSVを読む	読み取り	-(何も変えない)
転記用の下書きファイルを作る	ファイル編集	git で1つ前に戻す
会計ソフトへ仕訳を登録する	外部への書き込み	会計ソフト側で取消の仕訳を入れる
取引先へ確認メールを送る	外部への送信
元のCSVを削除する	削除

メールの行は、送ったあとで取り消す方法がありません。削除の行は、バックアップの手順を決めていなければ戻せません。「たぶん戻せる」は書けないのと同じ扱いにします。

手順3 機械に仕分けさせる

戻し方の列が空かどうかで3つに仕分けます。当環境で上の表をそのまま読ませた、実際の出力です。

[任せる(何も変えない)] 請求書CSVを読む
[任せる] 転記用の下書きファイルを作る
[任せる+ログ(戻せるが手作業)] 会計ソフトへ仕訳を登録する
[人の承認(戻し方が書けない)] 取引先へ確認メールを送る
[人の承認(戻し方が書けない)] 元のCSVを削除する
→ 人の承認を置く操作: 2件 / 5件

5つのうち、人が見るのは2つだけです。残り3つは任せたままにできます。

手順4 承認が要る操作を、設定に落とす

Claude Code なら、settings.json の permissions に ask を書くと、その操作の直前で人に確認を求めます。書き方と評価の順番はAIエージェントの暴走を止める方法にまとめています。

道具の「元に戻す」をあてにしない

Claude Code には、作業を巻き戻す機能があります(入力欄が空のときに Esc を2回、または /rewind)。ただし公式ドキュメントは、巻き戻せる範囲をはっきり限っています。

Checkpointing does not track files modified by Bash commands. […] Only direct file edits made through Claude's file editing tools are tracked.

——Checkpointing|Claude Docs(2026年9月24日閲覧)

rm や mv のようなコマンドで変えたファイルは、巻き戻しでは戻りません。追跡されるのがファイルの編集だけなので、メールの送信のような外への操作は、そもそも巻き戻しの範囲に入っていません。同じページは、巻き戻しはバージョン管理の代わりではないとも書いています。巻き戻しは作業中の保険であって、業務の安全装置ではありません。手順2の「戻し方」の列には、道具の機能ではなく業務として戻す手順を書いてください。

人が止める場所|承認・確認・ログ

  • 承認……手順3で「人の承認」になった操作の直前。この例ではメール送信と削除
  • 確認……「任せる+ログ」の操作は、実行後に件数を報告させる。報告の形はAIエージェントの運用ログの残し方に書きました
  • ログ……操作一覧の表そのもの。操作を1行足したら、その行だけ判定し直す

うまくいかないときの直し方

  • 戻し方の列が全部埋まってしまう……「戻せるが、相手に届いた事実は残る」操作を見落としています。送信・公開・支払いは、取り消せても届いた後です。承認側に倒してください
  • 承認の数が多すぎて、人が疲れる……操作をまとめすぎています。「送る」の手前に「下書きを作る」を分ければ、作るまでは任せられます
  • 判定が人によって揺れる……「たぶん戻せる」を許しています。手順を1行で書けないものは、書けないとして扱います

判定表|任せてよいか、どこで人が確認するか

当社の判定表です。軸は「間違えたとき、業務として戻せるか」の1つだけにしています。

操作の種類戻せるか任せ方人が見る場所
読み取り・集計◯ 何も変えない任せる見ない
社内のファイル作成・編集◯ 版管理で戻せる任せる週1回まとめて
外部システムへの登録△ 取消はできるが手作業任せる+ログ実行後の件数
送信・公開・支払い× 届いた後は戻せない人の承認実行の直前
削除× 手順が無ければ戻せない人の承認実行の直前

×の行は「任せない」ではなく、直前に人が1回見るという意味です。

自社でやるのが大変なときの頼み先

操作に分けるところまでは自社でできます。難しくなるのは、連携先が増えて戻し方の手順そのものを作る必要が出てからです。作る側を外に頼むならAIエージェント開発会社の比較、小さく試せる先を探すならAI開発を小規模から頼める会社7選に、公式サイトの記載だけで並べています。

操作を書き出す前に、どの業務から始めるかを決めておく

操作一覧は、最初の1業務が決まってから作れます。どこから手を付けるかが決まっていないと、書き出す業務そのものが選べません。

AI適合度診断は10問で、どこから手を付けるべきかを点数にします。連絡先の入力は要りません。 作りたい仕組みが決まっているなら、AI見積もりに書くと約3分で概算が出ます。

出典

  • Checkpointing|Claude Docs(2026年9月24日閲覧)——巻き戻しが追跡するのはファイル編集ツールによる変更だけであること、Bashコマンドで変えたファイルは戻せないこと、Esc 2回と /rewind、バージョン管理の代わりではないこと
  • Configure permissions|Claude Docs(2026年9月24日閲覧)——permissions の ask で実行前に確認を求める設定

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