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【悲報】小さいシステム開発、断られる理由は「探し方」じゃなかった

小規模なシステム開発を頼める会社が見つからない原因は、探し方ではなく「見積もれない形で出している」ことにあります。IPAの非機能要求グレードを一次情報にして、30〜100万円の案件で発注側が先に決めておくべき項目と、レベルを1つ下げると何が起きるかを表にしました。

佐野 泰規佐野 泰規株式会社AIエージェント 代表取締役約9分で読めます
クリップボードに挟んだチェックリストに手書きで記入している手元。デスクにはノートとキーボードが置かれている
Pexels / Tima Miroshnichenko

この記事でわかること

  • 小さいシステム開発を頼める会社が見つからない原因の多くは、探し方ではなく「見積もれない形で出している」こと。受注側は決まっていない条件を高いほうに寄せて積むので、30万円で済む話が200万円の見積もりになる
  • IPAは「非機能要求グレード」で、238の項目のうち92項目を「コストや品質に影響が大きい重要項目」として切り出している。さらにその手前に、モデルシステムを選ぶだけの16項目の段がある
  • 30〜100万円の案件なら、発注側が先に決めるのは4項目で足りる(運用時間・サービス切替時間・稼働率・被災時の再開目標)。IPAが定義したレベルの階段をそのまま使える
  • それでも断られるときは、案件そのものを「動くところまで」で切る。要件定義だけを別発注する形なら、小さい会社でも受けられる

小さいシステム開発を頼める会社が見つからない——この状態の原因は、多くの場合「探し方」ではなく「案件の出し方」にあります。

30〜100万円で作れるはずのものが、聞くたびに「その規模はお受けしていません」と返ってくる。あるいは見積もりが返ってきたと思ったら300万円だった。私はこれを、発注側が悪いのではなく、受注側が見積もれないから起きていると見ています。そして見積もれない理由には、はっきり名前が付いています。

小さいシステム開発を頼める会社が見つからない理由は、金額ではない

まず、断られる側の事情から書きます。

システム開発の見積もりは、ほぼ「人月単価 × 工数」です。中堅・中小のSIerで人月60〜100万円というのが公開されている目安で、弊社の相場ハブもこの数字を基準にしています。ここで効いてくるのが、案件の大小に関わらず一定でかかる管理工数です。

営業が話を聞き、要件定義の担当が整理し、設計者が引き取り、実装者が作り、テスト担当が確認し、PMが全体を見る。この分業体制だと、引き継ぎのたびに人が増え、打ち合わせが増えます。30万円の案件でも、この体制を通すと管理工数だけで30万円を超えます。 だから断る。これは意地悪ではなく、算数です。

ただ、それだけなら「小さい会社を探せばいい」で終わる話です。厄介なのはもう一つのほうで、こちらのほうがよく起きています。

決まっていない条件は、受注側が「高いほう」で積む

見積もりを出す側は、決まっていない条件を勝手に安いほうへ寄せることができません。あとで「24時間動くと思っていた」と言われたら、その差額は自社で被ることになるからです。

だから未定の項目は、必ず高いほうに倒して積みます。 稼働時間が決まっていなければ24時間動く前提で組み、止まってよい時間が決まっていなければ冗長化し、同時利用者数が決まっていなければ余裕を持ったサーバー構成にする。

この数項目が未定なだけで、同じ機能のシステムが3倍から5倍になります。 「小さい案件だと思って相談したのに、大きな見積もりが返ってきた」のからくりはここです。

そして重要なのは、この項目群には20年近く前から名前が付いていて、無償で公開されているということです。

IPAは「コストに効く項目」を92個に絞ってくれている

IPA(情報処理推進機構)が公開している非機能要求グレードというツール群があります。要件定義の段階で、発注者と開発者の認識のズレを防ぐために作られたものです。

「非機能要求グレード」は、「非機能要求」についてのユーザと開発者との認識の行き違いや、互いの意図とは異なる理解を防止することを目的とし、非機能要求項目を網羅的にリストアップして分類するとともに、それぞれの要求レベルを段階的に示したものです。

——IPA「システム構築の上流工程強化(非機能要求グレード)紹介ページ」(2026年8月28日閲覧)

体系はこうなっています。

非機能要求を6大項目、34中項目、116小項目、238メトリクスに体系化

(システムの開発コストや品質に影響を与える度合いの大きいメトリクスを重要項目とする。)

——IPA「非機能要求グレード」実践セミナー資料(2019年3月4日)(2026年8月28日閲覧)

そして利用手順が3段階に分かれていて、段階ごとに扱う項目数が違います。

段階やること項目数IPAによる位置づけ
① モデルシステムの選定3つの型から自社のシステムに近いものを1つ選ぶ16項目方向性の確認
② 重要項目のレベル決定グレード表でレベル値を決める92項目コストに大きな影響がある要求項目を決定
③ 重要項目以外のレベル決定項目一覧で残りを決める238項目開発開始までに必要な要求項目を決定

私がこの資料でいちばん価値があると思っているのは、②を「コストに大きな影響がある要求項目」と明記しているところです。238個ぜんぶ決めなくても、92個決まればおおよその金額は出ると、公的機関が言い切っている。しかも各項目にレベル0〜5の階段が用意されていて、

レベル0からレベル5までの6段階で設定。レベル値が大きいほど実現難易度は高くなり、一般に開発コストは増加。

とはっきり書いてあります。値段の上げ下げのつまみが、どこにあるか公開されているわけです。

ひとつ正直に書いておくと、この事業は2009〜2018年度で終了していて、ページ自体も2023年8月時点の情報として公開されています。それでもツールはそのまま無償でダウンロードでき、中身は今も使えます。 クラウド前提の項目は読み替えが要りますが、「何を決めるとコストが動くか」の骨格は変わっていません。

30〜100万円なら、先に決めるのは4項目でいい

とはいえ、92項目を発注前に埋めるのは現実的ではありません。IPA自身も「全ての非機能要求項目を一度に均一的に確認、評価することは現実的ではありません」と書いています。

そこで、小規模案件で本当に金額を動かす4項目だけを抜き出しました。IPAが定義しているレベルの階段をそのまま使っています。下の表を埋めて渡すだけで、返ってくる見積もりが変わります。

決める項目IPAのレベル(抜粋)30〜100万円で狙う線
運用時間(通常)0=規定なし/1=定時内(9時〜17時)/2=夜間のみ停止(9時〜21時)/3=1時間程度の停止あり/4=若干の停止あり/5=24時間無停止1〜2。社内で使う業務システムなら、夜中に止まっていて困る人はまずいない
サービス切替時間(障害から復旧までに切り替わる時間)0=24時間以上/1=24時間未満/2=2時間未満/3=60分未満/4=10分未満/5=60秒未満0〜1。ここを3以上にすると冗長構成が要り、サーバー費用が常時倍になる
稼働率高いレベルの例として4=99.99%(年間停止許容時間1時間未満)明示的に下げる。99.9%でも年間の停止許容は8時間以上ある
被災時のシステム再開目標2=数か月以内に再開(週次バックアップからの復旧)/3=1週間以内/4=3日以内2、またはIPAが挙げる「データを持たず、復旧が不要な場合」に該当するか確認する

このうち稼働率だけは、下げると言い出すのに勇気が要ると思います。「99.99%は要りません」と自分から言うのは、なんとなく品質を諦めた気になる。

でも数字で見ると印象が変わります。99.99%は年間の停止許容が1時間未満、99.9%は約8.8時間、99%は約3.7日です。社内の申請システムが年に8時間止まるのと、そのために構成を二重化して初期費用と月額が倍になるのと、どちらが困るか。私は前者を選ぶ会社のほうが多いと思っていますし、そう言ってくれた発注者には削った理由を見積書に残して返すようにしています。

表に載せなかった3つも、決まっているなら書く

上の4つほど劇的ではありませんが、書いてあると見積もりの幅が縮む項目です。

  • 同時アクセス数:「上限が決まっている」と書けるかどうか。社内20人なら20人と書く
  • 既存データの移行:何件を、どの形式(Excel/CSV/既存システムからの出力)で持ち込むか。件数と形式が書いてあるだけで、移行の工数は見積もれます
  • 通常時のレスポンス:「3秒以内に返れば十分」など。ここを決めないと、受注側は速いほうを前提に構成を組む

それでも断られるときは、案件を切る

条件を書いても断られることはあります。そのときは探す先を変えるより、案件そのものを切るほうが早いです。

  1. 要件定義だけを別発注にする。 「何を作るか」を決める工程だけを切り出す。ここが終わっていれば、実装だけを別の会社に出せます
  2. 第1フェーズを「一番困っている1機能」だけにする。 全部入りの構想を持っていくと必ず数百万円になります。月に何時間の手作業が消えるかで1機能を選ぶと、投資判断もしやすい
  3. 既製サービスで代替できる部分を抜く。 会計・勤怠・チャットは既製品のほうが安い。作るのは「自社にしかない業務」だけに寄せる

このうち1は、断られた会社に出し直すときにいちばん効きます。「要件定義まで終わっている案件」は、受注側から見ると別物だからです。

どこに頼めるか、と、当社が合う人

頼み先の形態(大手SIer/中堅開発会社/フリーランス/小規模専門)ごとに合う人の整理はAI開発の外注先の選び方に、機能別の金額の目安は業務システムの費用、作ったあとにかかる分は保守運用費の相場に書いています。

弊社について正直に書くと、合うのはこういう方です。

  • 30〜100万円規模で、まず1機能から始めたい
  • 稼働時間や稼働率を、業務実態に合わせて下げる判断ができる
  • 作ったあと、他社に引き継げる状態で納品してほしい

逆に合わないのは、24時間365日の停止が許されないシステム、大人数の常駐体制が要る案件、既に詳細な仕様書があって指定どおりに作るだけの発注です。最後のものは、単価の安い会社に出したほうが合理的です。

金額の当たりを先に付けたい場合は、AI見積もりに作りたいものを書いてみてください。SIerの相場と当社の金額が並んで出ます。上の4項目が決まっていれば、その説明を一緒に入れると精度が上がります。

出典

よくある質問

小さいシステム開発を頼める会社はどこで探せばいいですか?
探す場所より先に「見積もれる形にする」ほうが効きます。同じ内容でも、稼働時間や復旧の要求が決まっていないと受注側はリスクを高く積むため、30万円で済む話が数百万円の見積もりになります。本文の4項目を決めてから複数社に出すと、比較できる見積もりが返ってくるようになります。
なぜ大手は小さい案件を断るのですか?
金額の問題というより、体制の問題です。営業・要件定義・設計・実装・テスト・管理を分業する体制では、案件の大小にかかわらず一定の管理工数がかかります。中堅・中小のSIerでも人月60〜100万円が目安なので、管理工数だけで小規模案件の予算を超えることがあります。
30万円でシステム開発はできますか?
範囲を絞れば可能です。弊社は約30万円から受けています。ただし24時間無停止・高い稼働率・災害時の即時復旧といった要求が入ると、同じ機能でも金額の桁が変わります。何を諦めるかを先に決められるかどうかが分岐点です。
非機能要求グレードとは何ですか?
IPA(情報処理推進機構)が公開している、非機能要求を体系化したツール群です。可用性・性能拡張性・運用保守性・移行性・セキュリティ・システム環境エコロジーの6大項目、34中項目、116小項目、238メトリクスに整理され、そのうち92項目が「開発コストや品質に影響を与える度合いの大きい重要項目」とされています。無償で公開されています。
要件が固まっていない段階で相談してもいいですか?
構いません。むしろ固まる前のほうが、削れる場所を一緒に探せます。弊社は要件定義だけを切り出した発注も受けています。AI見積もりを使うと、作りたいものの説明から概算レンジがその場で出ます。

自社の場合、いくら?

作りたいものを入力するだけで、AIが約3分で概算見積もりを作成します。一般的なSIer相場との比較つき、無料・営業からのしつこい連絡はありません。

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