株式会社AIエージェント
歯科医療DX業務システム自動化

【歯科医院】リコール自動化、最初に決めるのは「間隔」じゃない

歯科医院のリコール(定期健診の案内)を自動化するとき、リコール間隔は臨床判断ではなく診療報酬の算定要件から決まります。2026年6月施行の令和8年度改定で歯周病安定期治療(SPT)と歯周病重症化予防治療が統合され「歯周病継続支援治療」になりました。2区分を前提に作ったシステムは区分そのものが消えています。厚労省の改定資料を引いて、改修チェックリストとテーブル設計まで落とし込みました。

佐野 泰規佐野 泰規株式会社AIエージェント 代表取締役約10分で読めます
灰色の卓上カレンダーを斜めから写したところ
Pexels / Matheus Bertelli

この記事でわかること

  • リコール間隔はシステムの設定値ではなく、算定要件で決まっている。厚労省の改定資料は「3月以内の間隔で実施した歯周病継続支援治療は月1回に限り算定する」としている
  • 2026年6月施行の令和8年度改定で、SPTと歯周病重症化予防治療が統合され「歯周病継続支援治療」になった。2区分を持っていたシステムは、区分そのものが消えている(リネームでは済まない)
  • 歯周病ハイリスク患者加算(80点)は「重症化予防連携強化加算」(100点)に変わり、医科からの情報に基づくことと、情報提供を行うことが要件に入った。案内を送るだけのシステムでは足りない
  • 病歴は個人情報保護法の要配慮個人情報。リコールの案内文に病名・処置名を書かない設計にしておく

歯科医院でリコール(定期健診の案内)を自動化しようとすると、たいてい「何か月おきに出すのがいいか」から考え始めることになります。

でも、そこから決めると設計を間違えます。 リコール間隔は臨床の判断であると同時に、診療報酬の算定要件で外側から縛られているからです。そして2026年6月に、その縛りの中身が変わりました。

今日は厚生労働省の改定資料を実際に引いて、リコール管理システムに何を持たせるべきかまで落とし込みます。歯科医院の院長・事務長と、歯科向けのシステムを受ける側の方に向けた記事です。

※診療報酬の詳細は告示・通知が正となるため、実際の算定は必ず原文と地方厚生局の案内でご確認ください。

歯科のリコールを自動化するシステムで、間隔を決めているのは算定要件です

まず事実から。厚生労働省の「令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】」に、こう書かれています。

○次の場合は、3月以内の間隔で実施した歯周病継続支援治療は月1回に限り算定する。

——令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】厚生労働省保険局医療課(令和8年3月5日版) p.27(2026年8月25日閲覧・強調は筆者)

「3月以内の間隔」で「月1回に限り」。 この2つが、リコール管理システムが扱うべき範囲をそのまま定義しています。

  • 最短は翌月(月1回まで)
  • 標準の想定は3か月以内の間隔
  • この条件から外れた回は、実施はできても算定の扱いが変わる

つまりシステム側で「リコール間隔=6か月」と固定値を持たせてしまうと、制度が想定している運用の外側に出ます。 患者ごとに間隔を持ち、かつ前回実施日から次回の算定可能日を計算できる形にしておく必要がある。ここが設計の起点です。

2026年6月に、区分が2つから1つになりました

そして今回いちばん大きいのがこれです。令和8年度改定(2026年6月施行)で、次の統合が行われました。

➢ ライフコースを通じた継続的・効果的な歯周病治療を推進する観点から、歯周病安定期治療及び歯周病重症化予防治療を統合し、歯周病継続支援治療に改称するとともに、評価を見直す。

——同上 p.27(強調は筆者)

点数は次のように整理されました。

対象歯数改定前 SPT改定前 P重防改定後 歯周病継続支援治療
1歯以上10歯未満200点150点170点
10歯以上20歯未満250点200点200点
20歯以上350点300点350点

ここがシステムの話に直結します。 リコール管理システムやレセコン連携を作るとき、患者の管理区分に「SPT」「P重防」の2つを持たせるのは自然な設計でした。ところが2026年6月以降、その2区分は存在しません。

これは「名前が変わった」のとは違います。2つが1つに畳まれたので、単純なリネームでは済みません。

  • 新規の登録は新区分1つだけ
  • 過去の履歴には旧2区分が残る(消してはいけない)
  • 統計・レポートは、施行日をまたぐと区分の粒度が変わる

私が設計するなら、管理区分はコード+適用期間で持ちます。「この患者はSPT」ではなく「2026年5月まではSPT、6月からは歯周病継続支援治療」と時点で解決できる形です。改定は2年ごとに来るので、次の改定でも同じことが起きる前提にしておくほうが安い。

加算の要件が「案内を送るだけ」では足りなくなりました

もう一つ、見落としやすい変更があります。

現行【歯周病安定期治療】○歯周病ハイリスク患者加算 糖尿病の病態によって歯周病の重症化を引き起こすおそれのある患者に対して、歯周病安定期治療を行った場合に、80点を所定点数に加算する。

改定後【歯周病継続支援治療】○重症化予防連携強化加算 糖尿病の病態によって歯周病の重症化を引き起こすおそれのある患者に対して、他の保険医療機関(歯科診療のみを行う保険医療機関を除く。)からの情報に基づき歯周病継続支援治療を実施し、治療した内容と今後の治療方針等について情報提供を行った場合に100点を加算する。

——同上 p.28(強調は筆者)

加算の条件が、院内で完結しなくなりました。 医科からの情報を受け取っていること、そして医科へ情報提供を返していることが要件です。

さらに医科側にも、対になる評価が新設されています。

<医科点数表>(新)歯科医療機関連携強化加算 60点(年1回)

——同上 p.28

つまり双方向の連携が点数で裏打ちされたということです。リコール管理システムが「呼び出し」だけを扱っていると、この加算の条件を満たしているかどうかが分かりません。外部からの文書を受け取った記録と、こちらから出した情報提供の記録を、患者に紐づけて持つ必要があります。

条文から、テーブルに持たせるものを起こす

ここまでを設計に変換します。これがこの記事でいちばん実用的な部分だと思います。

持つべき項目根拠なぜ必要か
前回実施日(日付単位)「3月以内の間隔」次回の算定可能日を計算する起点。月単位だと月末月初でずれる
同月内の算定回数「月1回に限り」月内2回目を弾く、または警告する
管理区分コード+適用期間2026年6月の統合施行日をまたぐ履歴を、時点で正しく解決するため
対象歯数の区分(1-9/10-19/20-)点数区分3区分で点数が変わる。歯数そのものも残す
医科からの情報の受領記録重症化予防連携強化加算「情報に基づき」の要件。文書の受領日と発行元
医科への情報提供の記録同上「情報提供を行った場合」の要件。提供日と内容
案内の送信履歴(媒体・日時・結果)運用二重送信の防止。届かなかった患者の抽出
連絡先の到達可否フラグ運用宛先不明・番号変更を放置すると呼べない患者が静かに増える

「前回実施日を日付で持つ」を軽く見ないでください。 月単位で持っていると、7月31日実施と8月1日実施が同じ扱いになって、算定可能日の計算がずれます。ここは後から直すとデータ移行が必要になる部分です。

案内文に病名を書かない

システムの話とは別に、送る中身の話をします。

3 この法律において「要配慮個人情報」とは、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報をいう。

——個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第2条第3項(e-Gov法令検索、2026年8月25日閲覧・強調は筆者)

病歴は要配慮個人情報です。 リコールの案内に「歯周病の定期管理の時期です」と書くと、その一文が病歴になります。ハガキやSMSは封書と違い、本人以外の目に触れる前提で考えたほうがいい。

私なら、案内文はこうします。

  • 書く:医院名、前回来院からの経過(「前回のご来院から3か月が経ちました」)、予約の方法
  • 書かない:病名、処置名、検査結果、担当医の所見

内容は来院時か、本人確認をしたうえで伝える。システム側は「案内文テンプレートに病名を差し込めない」ようにしておくのが確実です。差し込み項目を用意すると、いつか誰かが使います。

印刷や配信を外部に委託する場合は、委託先の監督義務も生じます。契約書に再委託の可否と、データの保存期間・削除の条件を入れておいてください。

費用の目安と、作るか買うかの分岐

作る場合の規模感です。

  • 単独のリコール管理(患者台帳+間隔計算+案内の一斉送信)… 80〜150万円/1〜2か月
  • 上+レセコンからのCSV取り込み(前回実施日・区分の同期)… 180〜320万円/2〜3か月
  • 上+加算要件の判定と連携記録(医科との文書のやりとりを含む)… 350万円前後〜/3〜5か月

※当社試算です。最大の費用要因はレセコンが外部連携に対応しているかどうかで、CSVの手動書き出ししかできない場合は運用側の手数が残ります。

分岐の考え方はこうです。

  • レセコン付属のリコール機能で、日付単位の前回実施日と管理区分が取り出せる → 作らない
  • 取り出せるが間隔の計算と一斉送信が手作業 → 送信側だけ作って取り込む
  • 区分の統合にレセコンがまだ追随していない → ここは待つ。自作で先回りすると二重管理になります

3つ目は今年に限って現実に起こり得ます。改定の施行は2026年6月なので、ベンダーの対応状況を先に確認してください。

制度の記録要件からシステムの形を決める考え方は、産廃の電子マニフェスト連携や調剤薬局の在庫・期限管理でも同じやり方で書いています。自社の要件でいくらになるかは、無料のAI見積もりで概算を取れます。

最後に、順番の話

正直に書くと、システムより先にやったほうがいいことがあります。

いま呼べていない患者が何人いるかを数えることです。 前回来院から3か月・6か月・1年を過ぎた患者を、それぞれ何人抱えているか。レセコンから患者一覧を出せば、多くの医院で1時間もかからずに分かります。

私がこれを勧めるのは、その数字で作るべきものが変わるからです。3か月超が中心なら間隔管理の自動化が効きます。1年超が積み上がっているなら、必要なのは呼び出しの仕組みより連絡先が生きているかの棚卸しです。後者にリコール自動化を入れても、届かない案内を自動で出し続けるだけになります。

先に決めるべきなのは、どのツールを入れるかではなく、いま誰を呼べていないかです。


出典(すべて2026年8月25日閲覧)

※厚労省の改定資料には「本資料は現時点での改定の概要をご紹介するためのものであり、算定要件・施設基準等の詳細については、今後正式に発出される告示・通知等をご確認ください」との注記があります。本記事も同じ前提で読んでください。実際の算定・届出は、告示・通知の原文と地方厚生局の案内が正となります。

よくある質問

歯科のリコール間隔は何か月にすればよいですか?
臨床判断が先ですが、システムの設計値としては算定要件から決まります。厚生労働省の令和8年度診療報酬改定の概要(歯科)は、歯周病継続支援治療について「3月以内の間隔で実施したものは月1回に限り算定する」としています。したがってシステムは「最短で翌月/原則3か月以内」を扱える形にしておく必要があります。実際の運用は必ず告示・通知の原文と、地方厚生局の指導内容でご確認ください。
SPTという区分はもう使えないのですか?
令和8年度改定(2026年6月施行)で歯周病安定期治療(SPT)と歯周病重症化予防治療が統合され、「歯周病継続支援治療」に改称されました。2026年6月以降の算定ではこの新区分になります。ただし施行前の履歴データには旧区分が残るので、システム側では「いつの時点の区分か」を持たせる必要があります。
リコールの案内をSMSやハガキで送るとき、注意することはありますか?
病歴は個人情報保護法第2条第3項の要配慮個人情報にあたります。案内文そのものに病名・処置名を書くと、封書でない媒体では第三者の目に触れる可能性があります。設計としては、案内文には診療科名と来院時期だけを載せ、内容は来院時または本人確認後に伝える形が無難です。委託先(印刷・配信業者)の監督義務も生じます。
リコール管理システムを作るといくらかかりますか?
当社試算では、レセコンと連携しない単独の呼び出し管理で80〜150万円、レセコンからのCSV取り込みを含めて180〜320万円、加算の算定条件の判定と管理業務報告まで含めると350万円前後からが目安です。案件により変動します。レセコンが外部連携に対応していない場合、そこが最大の費用要因になります。
再来院率はどれくらい上がりますか?
当社が保証できる数字はありません。効果は現状の呼び出し方法(電話のみか、案内を出していないか)と、対象患者の抽出条件で大きく変わります。数字を約束する会社より、「いまどの患者を呼べていないか」を先に数えてくれる会社を選ぶことをおすすめします。

自社の場合、いくら?

歯科医院の業務は例外処理が多く、要件が固まりきる前ほど見積もりがぶれます。作りたいものを入力すると、AIが約3分で概算を出します。無料で、営業からのしつこい連絡はありません。「そもそも作る価値があるか」の段階でも構いません。

AIで概算見積もり(無料) →

先に費用の目安を知りたい方は用途別の費用相場へ。

あわせて読みたい

← ブログ一覧へ戻る