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AI研修のカリキュラムの作り方|ツールの使い方は4区分のうち1つです

AI研修のカリキュラムを自社で組むときの順番を、IPA「デジタルスキル標準」DSS-L ver.2.0(2026年4月)の4区分を目次にして整理しました。プロンプトの使い方はHowの中の一項目で、標準は Why・What・How・マインド・スタンスの4つで定義されています。助成金の要件である10時間の時間割に落とした表も載せました。

佐野 泰規佐野 泰規株式会社AIエージェント 代表取締役約7分で読めます
曜日ごとの記入欄が並んだ週間スケジュール表とペンを俯瞰した写真
Pexels / cottonbro studio

この記事でわかること

  • 国(IPA)が出している「DXリテラシー標準」がそのままカリキュラムの目次になる。区分は4つ——マインド・スタンス/Why(DXの背景)/What(活用されるデータ・技術)/How(データ・技術の利活用)
  • プロンプトの使い方は How の中の一項目。そこだけで組むと、4区分のうち1つの、さらに一部しか埋まらない
  • 標準には生成AI利用において求められるマインド・スタンスという補記があり、権利侵害・情報漏洩・倫理的な問題への注意が明記されている。研修で飛ばされやすいのはここ
  • 10時間の時間割に落とした表を載せた。人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の支給対象が実訓練時間数10時間以上なので、時間の器は先に決まっている

AI研修をやろう、となったときに最初に詰まるのがカリキュラムです。

社内で案を出すと、たいてい「プロンプトの書き方」「ChatGPTの使い方」「便利な事例集」に落ち着きます。悪くはないのですが、これで組むと国が出している標準の4区分のうち、1つの中の一部しか埋まりません。

目次を自分でゼロから考える必要はありません。IPAが「DXリテラシー標準」として公開しているものが、ほぼそのままカリキュラムの目次になります。

標準の4区分が、そのままカリキュラムの目次になる

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「デジタルスキル標準」は2つに分かれていて、そのうち全てのビジネスパーソン向けが DXリテラシー標準(DSS-L)です。最新版は ver.2.0(2026年4月)。

DXリテラシー標準:全てのビジネスパーソンが身につけるべきスキルの標準

——IPA「デジタルスキル標準 DSS-L 分冊版 ver.2.0」(2026年4月)

構成は4つです。標準の資料にある区分をそのまま並べます。

区分標準での定義(要旨)項目の例
マインド・スタンス新たな価値を生み出すために必要な意識・姿勢・行動事実に基づく判断/顧客・ユーザーへの共感/変化への適応/コラボレーション/常識にとらわれない発想
Why(DXの背景)DXの重要性を理解するために必要な、社会・顧客・競争環境の変化に関する知識社会の変化/競争環境の変化/顧客価値の変化
What(DXで活用されるデータ・技術)ビジネスの場で活用されているデータやデジタル技術に関する知識データ(社会におけるデータ/データを読む・説明する)/AI/クラウド/ハードウェア・ソフトウェア/ネットワーク
How(データ・技術の利活用)利用する方法や、活用事例、留意点に関する知識ツール利用/活用事例/モラル・セキュリティ・コンプライアンス

「プロンプトの書き方」は、いちばん右下のセルの中の一項目です。 標準の側から見ると、そこだけを2時間やって終わりにするのは、目次の1行だけを読んだ状態に近い。

私はこの表を、社内で企画を通すときの資料としても使えると読みました。「何を教えるか」を自社の思いつきで説明するより、公開されている標準の区分に乗せたほうが、決裁は通りやすいからです。

生成AIについては、標準の側に「態度」の補記がある

DSS-L には生成AI利用において求められるマインド・スタンスという補記があります(2023年8月改訂補記)。3つ挙げられていて、2つ目がこれです。

生成AI利用において、期待しない結果が出力されることや、著作権等の権利侵害・情報漏洩、倫理的な問題等に注意することが必要であることを理解している

——同上

研修でいちばん飛ばされるのがここです。 使い方の話は盛り上がりますが、権利侵害と情報漏洩の話は地味なので後ろに回され、時間切れで消えます。

補記の1つ目には「『問いを立てる』『仮説を立てる・検証する』等のビジネスパーソンとしてのスキルと掛け合わせる」とあります。掛け合わせる相手が先にないと成立しない、という書き方です。 ツールの操作だけを教えても掛け算の片側が空いたままになる、と読めます。

10時間の時間割に落とす

時間の器は、多くの会社で先に決まります。人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の支給対象が実訓練時間数10時間以上だからです。10時間未満で組むと、内容が良くてもその時点で対象外になります。

4区分を10時間に割ると、たとえばこうなります。配分は対象者で変わるので、これは出発点の型として見てください。

回時間区分扱うこと
12時間Why自社の顧客・競争環境で何が変わったか。一般論ではなく自社の話にする
22時間WhatAIができること・できないこと。データの読み方
32時間How(利用方法)実際のツールを触る。ここが従来の「AI研修」の全体だった部分
42時間How(留意点)権利侵害・情報漏洩・社内ルール。持ち帰る禁止事項を紙にする
52時間マインド・スタンス自部署の業務を1つ選び、問いの立て方と検証の仕方を通しでやる

3回目だけを取り出したものが、よくある「プロンプト講座」です。 逆に言えば、残り8時間ぶんが空いている状態で「研修を受けさせたのに変わらない」と言っている会社が多い、という見方もできます。

1回目を自社の話にできるかが分かれ目です。 ここを外部の一般論で埋めると、受講者は自分の業務と結び付けられません。Why は社内の人が語ったほうが速い区分です。

先に決めておく4つ(決めないとカリキュラムは組めない)

  1. 対象者——全社員か、特定部署か。DSS-Lは全てのビジネスパーソン向けの標準なので、対象が変われば同じ4区分でも配分が変わります
  2. 総時間——助成金を使うなら10時間以上が前提。使わないなら自由ですが、4区分を扱うなら10時間は目安になります
  3. 自社の題材——1回目と5回目で使う「自社の業務」を先に1つ決めます。ここが空のまま発注すると、返ってくるのは一般的な内容です
  4. 持ち帰る成果物——禁止事項の一覧か、業務の手順書か。何を紙で残すかを先に決めます

研修会社に頼む場合の確認項目はAI研修会社の選び方チェックリストに、社内で作る「事業内職業能力開発計画」との関係は事業内職業能力開発計画の書き方にまとめています。自社でやるか外に出すかの費用比較はAI研修の内製と外注です。

組む前に、自社の現在地を出しておく

ここまで読んで「うちはどの区分が弱いのか」が気になった方は、順番としてはそちらが先です。カリキュラムは、弱いところに時間を寄せて初めて効きます。

自社がAIをどこまで使える状態にあるかは、AI適合度診断の10問でその場で点数になります。人・業務・データ・体制のどこが弱いかが分かります。連絡先の入力は要りません。

当社のAI研修は1名6万円(税別)〜で、人材開発支援助成金の経費助成を使った場合の実質負担は1.5万円/名〜です(訓練10時間以上・助成金活用時。受給を保証するものではありません)。上の4区分をどう配分するかから一緒に決めます。

出典

  • 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「デジタルスキル標準 DSS-L 分冊版 ver.2.0」(2026年4月)PDF(2026年9月8日閲覧。DXリテラシー標準の全体像・項目一覧・生成AI利用において求められるマインド・スタンスを参照)
  • IPA「デジタルスキル標準」案内ページ(2026年9月8日閲覧)
  • 厚生労働省・都道府県労働局「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内」LL080408開企07(令和8年度)PDF(2026年9月8日閲覧。実訓練時間数10時間以上の支給要件を参照)

助成金は審査があり、訓練の開始前に計画届の提出が必要です。申請前に必ず公式サイトで最新の要件と日程をご確認ください。

よくある質問

AI研修のカリキュラムは何から決めればいいですか?
目次からではなく「誰に受けさせるか」からです。DXリテラシー標準は全てのビジネスパーソン向けの標準なので、対象が全社員なのか特定部署なのかで、同じ4区分でも配分が変わります。対象 → 時間の総量 → 4区分の配分 → 各回の題材、の順で決めると手戻りが出ません。
プロンプトの書き方だけを教える研修ではだめですか?
だめではありませんが、それはIPA「DXリテラシー標準」でいう How(データ・技術の利活用)の中の一項目です。標準は マインド・スタンス/Why/What/How の4区分で定義されているので、そこだけで組むと残りが空きます。社内で「研修は受けたが現場が変わらない」となる典型がこの形です。
何時間で組めばいいですか?
助成金を使う予定があるなら、時間の器が先に決まります。人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の支給対象は実訓練時間数10時間以上なので、10時間未満で組むとその時点で対象外です。使わないなら自由ですが、4区分を扱うなら10時間はひとつの目安になります。
生成AIの注意点はどこまで教えるべきですか?
IPAの標準に「生成AI利用において求められるマインド・スタンス」という補記があり、「期待しない結果が出力されることや、著作権等の権利侵害・情報漏洩、倫理的な問題等に注意することが必要であることを理解している」と書かれています。最低限ここは外せません。社内ルールとセットで扱うのが実務的です。
自社で組むのと外部に頼むのはどちらがいいですか?
4区分のうち Why と How(自社の業務での使いどころ)は社内の人のほうが具体的に語れます。What(技術)と留意点は外部のほうが速いことが多いです。全部を外に出すか、全部を内でやるかの二択にしないでください。費用の比較は別記事にまとめています。

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